小規模多機能とホテル併設 介護関係者が集う「場」に ゆず(広島県尾道市)【前編】

2023年3月26日

 

 

昨年6月に開業した、介護事業所と同じ敷地に建つ小さなホテルが業界で話題になっている。なぜホテルを介護事業所と同じ敷地に開設したのか、介護事業とホテルのシナジー効果などについて、運営者ゆず(広島県尾道市)の川原奨二社長に話を聞いた。

 

 

ゆず
川原奨二社長

 

 

 

キッチンを完備 一棟貸しも可能

 

 

――まず、会社について教えてください。

川原 私自身の介護業界歴は20年以上になります。2013年に起業しました。現在、グループホーム3ヵ所、小規模多機能を2 ヵ所、看護小規模多機能を2ヵ所のほか、訪問看護・デイサービス・居宅介護支援事業所を運営しています。また企業主導型保育所やシェアハウスなども手がけています。

 

 

――運営するホテルについて教えてください。

川原 もともと、グループホームと看多機を運営していたエリアで土地を購入しました。昨年4月に小多機を開設し、6 月にホテル「尾道のおばあちゃんとわたくしホテル」を開業しました。

 

ホテルは3つの客室を有した平屋で、1棟貸しにも対応できます。建物内にはダイニングキッチンがあり、冷蔵庫、調理器具、食器、調味料なども完備していますので、自炊も可能です。食事の提供は行っていません。別荘などのように「そこに滞在すること」自体を楽しんでもらうタイプのホテルです。

 

 

右の建物が小多機・左と奥がホテル

 

 

 

宿泊客の2割が介護業界関係者

 

 

――なぜ、同じ敷地内でホテルを運営しようと思ったのですか。

川原 例えば隣の福山市には介護事業者が運営するシェアハウスがあり、全国から介護関係者が集まる場になっています。「そうした『場』を作りたい」という気持ちがありました。私自身、ユニークな取り組みを行っている全国の介護関係者たちと交流・意見交換などをする機会が多くありますが、飲食店などでは時間の制約があります。ホテルであれば時間を気にせずに交流できます。

 

実際に、視察や見学を兼ねて多くの介護関係者が利用してくれています。そうした人たちとじっくり話ができるのは非常に貴重な機会です。場合によっては当社のスタッフもそこに参加させますし、宿泊者にスタッフ向けの臨時の講習会・勉強会をしてもらうこともあります。

 

 

 

フロントは事業所内に

 

 

――利用者は介護関係者が多いのですか。

川原 約80パーセントは介護とは関係ない一般客です。大半は、介護事業者が運営していることを知らないでしょう。しかし、ホテルのフロントは小多機内に設けてあり、チェックイン業務も小多機のスタッフが行います。チェックインの場からは利用者の様子が見えますし、送迎の様子を目にすることも多いので、自然に介護の現場に接することになります。

宿泊を通じて、少しでも介護について知ってもらえればと思ったのもホテル開設理由のひとつです。

(次号に続く)

 

ホテルの客室のひとつ

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