音声付き体重計/公益財団法人共用品推進機構 星川安之氏
視覚障害者が自分で体重確認
日本で体重測定が一般化したのは1930年代。当時、死亡原因のトップが結核だったため、体重が多いことが健康とされていた。時代は変わり、肥満は万病の元とも言われ、体重計は肥満防止のため一般化されていった。
日本点字図書館(日点)が1993年、視覚障害者を対象に行った調査では、計測に不便を感じていると回答したのは59人。計測器の代表格である体重計は、測定結果を示す数字が透明のカバーに覆われているため、視覚障害者は触ってその数字を確認することができない。
そのため日点では、メーカー協力の下、透明カバーを外し針に触われるようにした。針が示す表示盤には、点字や凸点が付けられ、視覚障害者が自分で体重を確認できるものになったのである。技術は進化を続け、1978年、日本初デジタル表示の体重計が販売され一家に一台の必需品となった。
しかし、このデジタル表示の体重計、表示部の透明カバーを外しても、デジタルの表示には凹凸がないため、視覚障害者は、触って読むことができない。前述の調査では、「音声対応にしてほしい商品」の第一位に、家庭用体重測定機が挙がっていた。日点がメーカーに相談した結果、1986年、デジタル音声体重計が発売された。視覚障害者からは大変好評で多くの人が購入した……が、一時パタッと売れ足が鈍った。

体脂肪率、筋力量なども
音声で聞くことができる
メーカーは、不思議に思い、当事者に聞いて回ったところ、「音声でわかるのは、ありがたいのですが、他人に伝えたくない体重の時にも他人に知れてしまうのが……」という声があることが分かった。
さっそく、長いイヤホンを差し込める仕様に変えると、前にも増して人気製品となり、今では体脂肪率、筋力量なども、音声で聞けるまでになっている。
星川 安之氏(ほしかわ やすゆき)
公益財団法人共用品推進機構 専務理事
年齢の高低、障害の有無に関わらず、より多くの人が使える製品・サービスを、「共用品・共用サービス」と名付け、その普及活動を、玩具からはじめ、多くの業界並びに海外にも普及活動を行っている。著書に「共用品という思想」岩波書店 後藤芳一・星川安之共著他多数