認知機能向上で共同研究 遠隔会話アプリを活用 野花ヘルスプロモート・理化学研究所・岸和田市

2023年4月12日

 

 

訪問介護や看護、サービス付き高齢者住宅の運営などを手がける野花ヘルスプロモート(以下・野花/大阪府岸和田市)は、地元岸和田市と国立研究開発法人理化学研究所(以下・理研/埼玉県和光市)と、遠隔会話システムを活用した認知機能向上について共同研究を行う。2月14日に市役所で締結式が行われた。

 

 

締結式の様子

 

 

 

「写真」で直近記憶刺激 市が参加者募集で合計64名を予定

 

共同研究の正式名称は「遠隔会話システムを用いた新しい社会参加とその認知機能向上効果に関わる実証研究」。

 

理研では、高齢者の認知機能低下を予防するために、認知予備力を高める認知行動支援技術を重点的に開発している。特に写真を活用した会話支援技術「共想法」に立脚した会話支援技術の研究開発に力を入れている。

 

 

今回の共同研究は、共想法の研究をしている理研の大武美保子博士が8年前に大学で教鞭を執っていたときに岸和田市主催の介護セミナーで講演をしたのがきっかけ。野花の冨田昌秀社長がそれに参加していたことから親交が始まった。大武博士が理研とは別に運営している認知症研究が目的のNPO法人に冨田社長も参画している。冨田社長から理研に「岸和田で研究を」と呼びかけたという。

 

研究の具体的な内容は、岸和田市が認知症ではない65歳以上の高齢者を募り、理研が開発を進めている共想法アプリケーションを用いるグループと用いないグループに分け、一定期間終了後に両グループの認知機能の変化などを比較検証するもの。参加人数は各グループ32名を想定。

 

 

テーマに沿った写真の説明行う 孤立感解消等の効果も

 

アプリ活用グループは4名1組となり、理研が前もって指定したテーマに沿った写真をメンバーそれぞれが撮影。自分の写真について1分間説明した後に2分間他のメンバーからの質問などに答えることがワンセット。これを説明者を交替して4回繰り返す。月2回を原則として8ヵ月で12回実施する予定。

 

4名全員が理研の貸与したスマートフォンの画面上で同じ写真を見ながらリアルタイムで遠隔会話することが、直近の記憶を刺激するだけでなく、孤独感解消など高齢者の社会的健康に寄与することが期待される。また、現在認知症ケアの現場で活動している野花所属の4名の介護スタッフが、各グループのコーディネート役として関わる。スマホの使い方の説明や、使用する写真が、指定するテーマに沿ったものか、肖像権や著作権上の問題はないかの確認など事前準備を主に担当する。

 

 

 

冨田社長

 

 

■野花ヘルスプロモート冨田社長コメント

 

まず、当社のような一介護事業者が理研と一緒に研究できることを非常に名誉に思っています。
介護事業者が認知症の方と関わるときは、症状がかなり進行してしているケースが大半でした。「もっと初期の段階から関われれば」という思いはずっとありました。

 

認知機能の低下は自分ではなかなか認識できず、周囲が気づくことが多いのですが、コロナ禍で人と接する機会が減り、それも思うように進まない状況が続いていました。また、この間に高齢者の体力が衰え、外出が難しくなるという課題もありました。そうした中で、自宅にいながら仲間とリアルに会話ができることが、社会的孤立の解消や認知機能の向上などに効果があると期待しています。

 

私自身、認知症ケアに20年以上携わって来て『共想法』の素晴らしさは十分に理解しています。当社のような民間企業が関わることで、これが広く普及することに期待しています。

 

 

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