歩行訓練、VRで気軽に 東急イーライフデザイン
東急イーライフデザイン(東京都渋谷区)は1月より、展開するシニア向け住宅「グランクレール」シリーズの「介護住宅」でVRを活用した機能訓練、レクリエーションを試行的に開始している。将来的に全施設への導入を目指し、効果検証を行っていく。
国内外名所を散歩 五感で外出気分
導入しているのは、silvereye社の「RehaVR」。360度のパノラマ映像で、国内外320ヵ所以上の観光名所の中を歩いているかのような体験ができる。コンテンツの数は230以上。
利用者はヘッドマウントディスプレイ(専用ゴーグル)を着用し、専属の足踏みペダルを踏むことで、連動して動く映像により散歩をする感覚で歩行訓練を行うことが可能だ。
iPadで簡易に操作できる仕様であることも特徴。どの施設でも、職員は10~15分で使いこなせるようになるという。利用者が視聴する映像を大型モニターに映し出し、職員やほかの入居者と会話を楽しみながら取り組んでいる。
通常は1~2分ほどしか歩行訓練が続かなかった入居者も、ゴーグルを装着した状態では5分以上続く例もある。特に認知症の人には効果的で、通常時より集中して取り組む姿が見られるという。当初はゴーグルの着用に抵抗感を示す人もいたが、一度体験した後のリピート率は高い。「機能訓練の時間に限らず、隙間の数分の時間で気軽に楽しんでもらっている」と経営企画部・武田将孝課長は語る。
足が不自由な入居者は、ゴーグルを装着して景色のみ楽しむといった使い方もできる。なかなか外出ができない人も、外出気分を五感で味わうことができると好評だ。「忙しく外出支援や散歩の付き添いを高頻度でできないと気にかけていた職員にとっても、取り入れやすいツールとなっている」と武田課長。
現在試行的に導入しているVRセットは2台で、1台につき導入費用は月額3万円から(付帯設備を含むリース契約)。1ヵ月サイクルで各施設に順番に配備している。5月までに、全施設での試行導入を終える予定だ。効果検証の結果を踏まえ、将来的に全施設への本格導入を視野に入れているという。東急グループはグループを挙げてDXを進めており、デジタル機器で〝顧客体験価値を向上させる〟取り組みに注力している。

VRを楽しむ入居者