米国シニアリビング市場で運営拡大 4200室に 三井物産系のMBK Real Estate
三井物産の米国現地子会社MBK Real Estate(MRE)のシニアリビング事業は、3月〜4月にかけて、新たに3物件・約500室の運営を受託。米国におけるシニアリビングの総運営室数は4200室となった。日本と異なる米国の高齢者住宅市場や同社のポジションについて山中克夫Chairman and Presidentに話を聞いた。

MBK Real Estate
山中克夫
Chairman and President
――MREについて
山中 当社は三井物産グループとして、1990年にカリフォルニア拠点の不動産デベロッパーと合弁会社を設立した。その後に100%子会社化したのが現在のMREだ。当時からシニアリビング事業を行っており、30年超の実績がある。日系企業として唯一米国でシニアリビング事業を手掛けている。
――米国のシニアリビング市場について
山中 米国は日本に比べると高齢化率は低いが、1946年〜64年生まれのベビーブーマー世代の高齢化により、シニアリビングの入居者の主な年齢である80歳以上人口は今後急激に増加する見込み。27年以降、年間80万人〜100万人増加するという統計もあり、30年には約2000万人と、20年の1.5倍になる見込みだ。その後も増加が続くと予測されている。
米国のシニアリビング市場の主要物件タイプは4つ。食事や家事サービスが付き元気な高齢者が住まう「インディペンデント・リビング」、日常的な生活支援、健康管理、認知症ケアがある「アシステッド・リビング」「メモリー・ケア」、そして介護・医療サービスがある「ナーシングホーム」が主なカテゴリーとなる。当社はナーシングホームを除いた3カテゴリーを運営している。
――日本の高齢者住宅との運営形態の違いは
山中 米国のシニアリビングは、賃料上昇が前提であること、入居期間が2〜3年であることなど、日本と異なる点がある。中でも保有・運営形態の違いとしては、運営はフィーで委託されオーナーが事業のアップサイドを享受する点で、日本のホテルにも近い部分がある。
「(物件の)所有」と「運営」をそれぞれ違う法人が担うといった形態が一般的。
当社は「オーナー・アンド・オペレーター」と呼ばれる自ら物件を所有しながら経営・運営を行う形態が主力。現在の運営規模は38物件・4200室で、そのうち11物件・1250室が外部オーナーからの運営受託となっている。このほか、大型物件の運営受託も協議中であり、近いうちに5000室規模、全米トップ30位入りも視野に入ってきた。新型コロナによる経営の打撃やインフレによるコスト増の影響を受けた同業も多く、シニアリビング物件のオーナーより既存オペレーターから当社へ変更したいという打診が増えてきた。

新たに運営受託した「Mount Tabor」は300室規模
――他社と比較したMREの強みは
山中 いまだ西部6州のみでの展開ではあるが、ローカルに着実に成長してきたことだ。さらに、当社は15年以降、複数のファンドやJV(ジョイントベンチャー)、22年には日系企業では初となる米国シニアリビングを対象としたオープンエンドファンド(非上場型REITに類似する永続性ファンド)を組成するなど、外部の投資家の評価にも晒されてきた。過去30年、自ら運営することでノウハウを蓄積し、オペレーションマニュアルやシステムを更新。また、入居者ニーズをいち早く取り入れハード面でも物件価値向上に向け施策を迅速に実行してきた。ソフト・ハード両面に適時適切な投資を行うことで入居者満足度が高まり、また優秀なスタッフを雇用できている。
――今後の展開について
山中 自社のバランスシートで物件を取得するだけでなく、立ち上げたファンドや運営受託により事業規模を拡大していく。将来的には運営室数を1万室以上、全米トップ10の規模を目指している。