【中小企業の生存戦略】 持続可能な互助サービス「便利屋」で選ばれる企業に 小野長
建築資材の販売、エクステリア事業を行う小野長(岩手県一関市)は高齢化率37%以上の同市にて、介護保険適用の工事も行ってきた。昨年からは、地域住民のちょっとした〝困りごと〟に対応する便利屋サービス「あったかプロ」を開始。「住民の生活を支えるためにも、生き残り戦略としても、地方の中小サービス事業者は便利屋をしたほうが良いのではないか」と小野寺梨紗事業部長は語る。

「あったかプロ」事業
小野寺梨紗 事業部長
同社は雨どい工事やカーポートの補修工事、段差の解消工事などのエクステリア工事に幅広く対応してきた。その事業を通じ、地域住民の生活の困りごとに着目。コロナ禍で、離れて暮らす家族との接点が少なくなった独居高齢者などのニーズを捉え、昨年から便利屋を開始した。
家具を組み立てたい、生前整理をしたい、話を聞いてほしいといった介護保険上のヘルパーやケアマネジャーには頼みづらい〝ちょっとしたこと〟にも対応。1時間1500~2000円から応じる(場所や作業内容による)。介護保険を使っていない人や子育て中の母親世代などからの依頼もあり、週に2、3件サポートしている。
「〝ご近所さん〟の互助の延長として、呼ばれたらすぐ駆けつけることが強み。冬場には雪かきなどの依頼も多かった」と小野寺事業部長。スピーディーかつ丁寧な対応で信頼を得ることで、本業であるエクステリア工事の依頼、リピーター獲得にもつながっている。
「中小企業だからこそ機動力を発揮し、地域密着でできる。選ばれる企業として生き抜いていくためにも、どのサービス事業者も便利屋を行っていけば、限られた地域資源の中で高齢者を支えていけるのではないか」と考えを語る。
また、便利屋としてサポートする側の人材登録も行っている。アクティブシニアや主婦などが得意分野を登録することで、依頼があった際にスポットで仕事ができる仕組みを構築。「働く場が限られる地方において、人材が活躍する機会を生むことも重要。あくまでボランティアでなく最低賃金以上を渡すことで、登録者が働き続けられる持続可能なサービスとしていきたい」(小野寺事業部長)

女性スタッフの配置で、女性顧客からの安心も得ている