「ケアをマネジメントする」とは何か/みさと中央クリニック 髙橋 公一氏

2023年5月18日

 

 

 

その人を子細に知り尽くす

 

生活の大部分を占める「食事」「排泄」「入浴」という活動をサポートするためにケアがあるとするならば、それをマネジメントすることを生業としている職業がケアマネジャーであろう。

 

では、よりよいサービス計画を立案し、実施するにはどうしたらいいか?それはよりよいサービスを行える事業者と連携をとっていくことに他ならない。

 

 

例えば、認知症のコントロールが得意なドクターもいれば、私のように、医療的ケアに積極的に取り組んでいるドクターもいるであろう。また、デイサービスで利用者が「極楽だ」と思えるほどの入浴サービスを提供するところや、筋力が落ちた認知症患者をパワーリハビリにより自立歩行可能にして、自立支援により「要介護」状態を卒業させるデイの利用を促すこともできるであろう。

 

つまり、そういったさまざまな疾患をもった利用者の千差万別な家庭環境に合わせて、何ヵ所かの診療所・事業所、施設と連携して、その方を支えていくことがケアのマネジメントなのだ。

 

それには、その人がど生活の大部分を占める「食事」「排泄」「入浴」という活動をサポートするためにケアがあるとするならば、それをマネジメントすることを生業としている職業がケアマネのような人なのかを事細かく知り尽くすことが重要だ。その人の疾患歴が重要なのではない。優れたケアマネの報告書は、「〜で生まれ、〜歳まで○○で過ごし、高校進学を機に東京に出て八百屋に就職し、その後、レストランを経営」と一見、その方の医療的なケアに関係のない生まれや育ち、経歴といったことから入っていく。

 

この、生まれてから何らかの病気を発症するまでのあいだの〝生活歴〞が、むしろ疾患が起こったときにそれを解決するのに大きく影響することもあるのだ。

 

 

認知症でもう何も食べたがらなかった自分の母親に、「母さん、隣の○○さんがきゅうり採れたってもってきてくれたよ。裏の井戸水で冷やしておいたから食べない?」と声をかけて食べさせたことをきっかけに、ほんの少しだけど食事をしてくれるようになり、よい最期を迎えることができたと喜んでくれたというエピソードがあった。

 

これなどはまさにその人の生来の生き方、生活歴、食事の好みを聞けたことで、一時的ではあるが活力を吹き返らせることのできた事例だ。

 

 

医師は、疾患をみているのではない。患者をみているのだ。とすると、介護職は、介護することだけを職業とするのではなく、その人がいかにその環境で自分らしく過ごせるのかを一つでも多く引き出しを使いまくって、最高の演出をする「演出家」になってもらいたい。

 

 

 

 

 

 

髙橋 公一

医療法人社団 高栄会  みさと中央クリニック

埼玉医科大学病院 第一外科入局。消化器・一般外科、心臓血管外科、呼吸器外科、乳腺内分泌外科、移植外科、脳神経外科、小児科などを経験。2001 〜03 年に外科留学、移植免疫学を学ぶ。帰国後、埼玉医科大学に復職し、チーフレジデントを勤める。その後、池袋病院外科医長、行田総合病院外科医長を経て、08 年みさと中央クリニック開院。17 年に法人化。

 

 

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