財政制度等審議会 想定内の提言/斉藤正行氏

2023年5月31日

6月の骨太方針へ

 

5月11日、財務省による財政審が、社会保障(こども・高齢化等)をテーマに開催されました。毎年春に提言されるこの意見提言に、我々介護事業者は戦々恐々としてきました。とりわけ今回は、次期報酬改定を目前に控えたタイミングであり、提言の中身に注目が集まっていました。

 

その財政審より示された社会保障改革に向けた提言の中身ですが、想定されていた範疇の内容であり、「一安心した」という気持ちです。

もちろん、財政再建に向けた報酬削減案がいくつも示されていますので、提言内容が厳しいことは確かです。しかしながら、今回の提言では目新しい提言内容がほとんどありません。今回の提言は、いずれもすでに関係各位で議論が行われている内容ばかりであり、この提言によって新しい議論を呼び起こすような流れには繋がらないと思います。

 

具体的に示された提言内容は、例えば、介護保険法改正の議論において積み残した事項でもある「利用者の2割負担対象の拡大」、「老健における多床室の室料負担について」、更には、今回の法改正案では見送られ2027年改正において結論を出すことが示された「ケアプラン作成の利用者負担の設定」、「生活援助サービスをはじめとした訪問介護・通所介護における要介護1と2の方に対する総合事業への移管」、加えて、「経営の協働化、大規模化の推進」、「介護事業者の現預金、積立金について」、「サービス付き高齢者向け住宅などの集合住宅に対する減算拡大と、ケアマネジメントの適正化」などであり、いずれも、賛同できる内容は少なく、反証していきたいとは思いますが、すでに継続して議論が行われている内容ばかりです。

 

 

今回の内容が想定内にとどまった背景には、やはり、昨今の物価高騰による影響などを踏まえた世論の声への配慮が大きいのだと思います。

 

そして、更には、なんと財務省から「人材紹介会社の手数料問題への規制強化」、「ICTの活用による生産性向上、人員要件の緩和」、「アウトカム評価の更なる拡充」など、業界内で賛否は残るものの、事業者の賛同の多い提言も複数示されました。

 

加えてこの次に注目していくべきは、6月に閣議決定が予定されている「骨太方針2023」の中身です。この内容をもとに、介護報酬改定の議論へと繋がっていきます。骨太方針には、財政審の提言が盛り込まれることも多いため、その財政審の中身が想定内でとどまったということは、これからの介護報酬改定の議論において、我々介護業界としては幸先が良いと言えると思います。

 

 

 

斉藤正行氏 プロフィール
2000年3月、立命館大学卒業後、株式会社ベンチャーリンク入社。メディカル・ケア・サービス㈱の全国展開開始とあわせて2003年5月に同社入社。現在の運営管理体制、営業スキームを構築し、ビジネスモデルを確立。2005年8月、取締役運営事業本部長に就任。2010年7月㈱日本介護福祉グループ副社長に就任。2018年4月㈱ピースフリーケアグループ代表に就任。2018年6月、介護業界における横断的・全国的組織となる一般社団法人全国介護事業者連盟を結成。㈱日本介護ベンチャーコンサルティンググループの代表を務めている。

 

 

 

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