【CHECK マスコミ報道】「訪問介護に外国人を解禁へ」/浅川澄一氏
「容認論を軸に議論」と日経
厚労省は外国人が訪問介護に従事できるようにする規制緩和の検討会を7月25日に初めて開いた。各メディアが翌日報じたが、扱いに大差が生じた。東京新聞はベタ(1段)、毎日新聞は2段、朝日新聞と読売新聞、産経新聞は3段だが、日本経済聞は4段見出しと大きい。
日経新聞は「外国人の訪問介護拡大へ」「厚労省 特定技能などに容認論」とかなり前向きなトーンで緩和の背を押す。
人手不足を補うには足りないが、制度作りは必須との思いだろう。移民を含め人材不足の解消策の本命としてもっと議論されていい課題である。
東京新聞が7月18日から「医療の値段――-還流する票とカネ」をテーマに8回連載した。第1回は「日医連側 麻生派に5000万円献金」「横倉さんに頼まれたから」「診療報酬引き上げで麻生氏」と大見出しが躍る。
政治献金の元は医療費で、献金が診療報酬増など医師に有利な施策につながるという構図を解き明かそうと迫る。
第3回では「看護師ら報酬巡り 日医連に衝撃」と日本看護連盟の組織内議員の高得票が、看護師の収入増につながったと明かす。
昨年のかかりつけ医問題に触れた第5、6回目では、「日医連の地方医師が議員に働きかけてくれた」と議員の寄稿を引用し、懸案の認定制と登録制を阻止した内情を示す。
企画の意図は明快である。真正面からの取材に拍手、拍手だ。
認知症基本法が成立したが、社説での主張が弱々しい。「認知症サポーターが有効に活用できていない」(6月22日の毎日新聞)、「生活の不便さを行政と民間事業者が協力して改善してもらいたい」(6月17日の産経新聞)。
「予防」を後退させたり、基本的人権を謳ったりなど、同法の画期的な意義が理解されていないようだ。
「家事労働 勤務10時間以上13%」と厚労省の実態調査結果を2日の東京新聞が伝えた。労働基準法の適用外で死亡事故が起きたことを契機に調査した。過酷な労働条件と言われる介護保険の訪問介護ヘルパーの原点はここにあるようだ。ヘルパー裁判との関連を指摘して欲しかった。
毎日新聞は8月12日に記者執筆の「再編~答えのない安楽死」で、安楽死議論の続きを掲載した。3カ月前の同じ筆者の記事「安楽死は正解のない哲学」への反響を紹介している。
寄せられた著名医師の批判にこだわり、折角届いた一般読者からの感想は端折ってしまった。残念だ。
浅川 澄一 氏
ジャーナリスト 元日本経済新聞編集委員
1971年、慶応義塾大学経済学部卒業後に、日本経済新聞社に入社。流通企業、サービス産業、ファッションビジネスなどを担当。1987年11月に「日経トレンディ」を創刊、初代編集長。1998年から編集委員。主な著書に「あなたが始めるケア付き住宅―新制度を活用したニュー介護ビジネス」(雲母書房)、「これこそ欲しい介護サービス」(日本経済新聞社)などがある。