訪問介護、70歳以上が13%も 新「複合型サービス」が対応策か/浅川澄一氏

2023年9月6日

 

 

介護保険の訪問介護員(ホームヘルパー)の高齢化がますます高まっている。団塊世代が後期高齢者となるとともに利用者は増えているが、サービス提供者も「老人」になりつつある。
 

公益財団法人介護労働安定センターが公表した2022年度の「介護労働実態調査」で明らかになった。介護事業所と介護労働者の2本立てで構成。昨年10月に調査を実施し、全国8708の介護事業所と1万9890人の介護労働者から有効回答を得た。
 

調査によると、ヘルパーの13.5%、ほぼ7人に1人が70歳以上となった。平均年齢は54.7歳。全介護関係職員の平均50歳よりも5歳近く上回る。
 

70歳以上の比率を職種別に見ると、施設やデイサービスの介護職員は4.9%に止まっており、その平均年齢は47.3歳である。ヘルパーはそれよりも7.4歳も年長ということになる。
 

高齢者の自宅を一軒一軒訪ねながら活動するヘルパーは、施設内での職員よりはるかにハードワーク。それなのに7歳以上も年齢が上の担い手たちに頼らざるを得ない。
 

ヘルパーに次いで70歳以上の比率が高いのは看護職員だが、その比率は13.5%を大きく下回り
6.8%である。介護支援専門員(ケアマネジャー)は4.8%だ。

 

 

介護労働安定センターの2022年の調査より

 
  

65歳以上でもこうした傾向は変わらない。ヘルパーが26.3%なのに対して、看護職員は14.2%、ケアマネジャーは12.3%、施設介護職は11.0%である。70歳以上の場合より、ヘルパーとの差は縮まってはいるが、ヘルパーの4人に1人は、サービスを受ける人たちと同じ高齢者ということになる。「老々介護」は家族内だけでなく。社会化されたプロの担い手との関係にも広がってきた。

 

若いスタッフが集まらない状況は、事業者に尋ねた従業員の過不足感からも明瞭だ。「大いに不足」と「不足」、「やや不足」を合わせた「不足度」をみると、全事業所では66.3%なのに対して、ヘルパーは83.5%にも達している。3年前には80.1%だったから、人手不足は年々高まっていると言えるだろう。
 

なかでも、「大いに不足」を取り出すと、ヘルパーが27.9%と断然高い。第2位の施設の介護職員の11.9%を大きく引き離している。
 

 

こうした介護現場のヘルパー不足を一目で示しているのが有効求人倍率の急上昇である。
 

2022年は15.53倍となり、これまでの最高を記録した。施設の介護職の3.79と比べるとその大差に驚かざるを得ない。

 

厚労省調べ

 

ヘルパーの危機的な状態を前に厚労省は新たなサービスで対応を図る。通所介護(デイサービス)の職員に訪問介護を兼務してもらう「複合型サービス」の導入である。社会保障審議会介護保険部会で厚労省が提案した。今後基準を検討し来春から実現されそうだ。
 

ただ、既存の小規模多機能型居宅介護(小多機)の「泊り」を外した内容と実質的には同じなので、余程斬新な基準を設けないと差別化が難しい。加えて、介護現場や利用者とその家族からは複雑になる一方の制度の簡素化を求める声は強い。普及していない小多機の運用を大幅に緩和して対処する方が分かり易いはずだ。

 

 

浅川 澄一 氏
ジャーナリスト 元日本経済新聞編集委員

1971年、慶応義塾大学経済学部卒業後に、日本経済新聞社に入社。流通企業、サービス産業、ファッションビジネスなどを担当。1987年11月に「日経トレンディ」を創刊、初代編集長。1998年から編集委員。主な著書に「あなたが始めるケア付き住宅―新制度を活用したニュー介護ビジネス」(雲母書房)、「これこそ欲しい介護サービス」(日本経済新聞社)などがある。

 

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