介護「単発バイト」急拡大 ワーカー登録数、2年で10倍
介護・看護職に特化した有資格者限定の単発バイトアプリ「カイテク」。この2年間で登録事業所数は約15倍の2800ヵ所ほど、登録ワーカー数は約10倍の10万人ほど(8月現在)に急増。2020年にサービス開始以来、ノウハウを積み上げてきたカイテク(東京都渋谷区)の武藤高史社長に聞く。

カイテク 武藤高史社長
――コロナ禍以降、「ワークシェアリング」「単発バイト」といった働き方が広がりを見せている
武藤 特に人材不足の介護業界においては、職員を確保する新たな手段として、チャレンジする事業者が増えていると感じる。潜在労働力の掘り起こしに寄与するワークシェアリングは今後も普及が進むだろう。
――どういった課題を持つ事業所がカイテクを活用しているか
武藤 慢性的な人材不足に悩む事業所もいるが、急な欠勤や退職が発生した際に「来月の昼の時間にピンポイントで人がいない」といったケースで大いに活用してもらっている。
短期的な人員確保に貢献する一方、我々としては中長期的な目線で、カイテクの活用による生産性向上やケアの質向上、職員の休憩・休日の確保、さらには余剰人員の適正化、人材紹介や派遣と比較したコストメリットなど、本質的な経営課題の解決を一緒に考え進めている。
――事業者が感じる導入への不安はどのように解消しているか
武藤 挙げられる懸念点としては、面接がないことによるミスマッチや、いきなり業務を任せる心理的不安、「単発×直接雇用」というこれまでなかった雇用形態への抵抗感など。これらの声に対し安心してサービスを利用してもらうため、蓄積してきた事例に基づく支援を行い、PDCAサイクルを回して払拭してきた。
第一に、現場職員への説明やヒアリングは丁寧に行う。受け入れ体制を構築するため、各事業所に合わせたマニュアルの準備・依頼業務の切り分けは重要なポイント。他社事例も紹介した上でオペレーション改善まで介入してノウハウを提供できるのは、10万件以上の実績がある当社だからこそ。また、営業やフォローするスタッフは介護や医療職の経験者が8割以上。業界に精通し、ケアの質向上を考えたサポートができるのも強みだ。
ワーカーのデータも蓄積しているため、アプリ上で資格や実績、評価などに基づいた応募条件の設定など、細やかなマッチングを図ることもできる。
――今後の展望は
武藤 サービスの提供価値を高めるべく、事業者全体の人件費率の最適化や生産性向上による収益構造の改善、職員定着率や利用者満足度の向上といった重要な経営指標に資する機能開発や内容の見直しに努めていく。 また、現在の1都3県や関西を中心としたエリア展開から、さらに拡大を図る。直近では北関東や静岡、北海道、広島などに進出しており、今後は九州や東北エリアにも広げる計画だ。

アプリ画面。特養や有老、老健、GH、デイ、小多機など幅広い介護事業所が利用