【集中連載 韓国の介護・医療最新情報】第4回 デジタル大国韓国 ICT・スマート機器でケアにソリューション
高齢者取り残さない支援充実 アプリで機能訓練にも活用
韓国は、世界デジタルランキングで1位のデンマーク、2位のフィンランドに次ぐ3位のデジタル大国。1997年の経済危機以来、世界最先端の電子政府、ICT社会を目指して発展してきた。行政、銀行、病院など市民生活に必要な手続きは住民登録証(カード)1枚でスムーズに行え、わが国より20年は進んでいると評される。その基盤には62年の半世紀以上前から、住民登録番号制度(ナンバー制度)を導入しており、17歳以上の国民が持つ住民登録証(カード)がある(ちなみに指紋も登録されている)。
高齢者ケアの現場でも、デジタル機器による「スマートケア」が進んでおり、視察した高齢者住宅や認知症ケアセンター、デイケアなどいずれの場でもICT活用は当たり前のことになっていた。一方で、進化のスピードが早いデジタル環境で高齢者が「弱者」にならないような多彩な教育・支援プログラムが地域のサービス機関で提供されている。
■高齢者への多彩な情報化教育
視察したソウル市の麻浦総合福祉館では、「高齢者が尊厳を持てる社会」をビジョンに、高齢者が抱える生活上のさまざまな危機を解決する「統合的アプローチで地域社会を変える最適なソリューションの提供」を展開していた。サービス利用の登録会員は約3 万人、登録ボランテイアは2万人近い。
特にこの地域は高齢化率48%で独居が4人に1人と課題も多いので、単身世帯の支援事業が充実している。夫と死別した高齢女性の支援、独居男性の支援、虚弱高齢者支援、認知症予防、そして実際の在宅介護サービス提供まで幅広い地域事業を行っているが、なかでも情報化教育プログラムは目を引く。
コンピューター教室、インターネット活用教室、スマートフォン教室、アプリ・映像教室、キオスク(ネットショッピング)教室、スマート余暇プログラムなど実用的な教育が地域の高齢者に提供され、生活に取り入れられていた。わが国でも大いに参考にするべきだろう。
■デイケアの最新ツール「スマートテーブル」
ロングライフ社が韓国で展開するデイケア「ロングライフ・エルダーガーデン」や、ほかのデイケアで利用されていたのが「スマートテーブル」。AI搭載で20ものコンテンツが組み込まれていて、テーブルを囲んでゲーム感覚で楽しみながら、認知機能、記憶力、瞬発力や反応などのトレーニングになる。

「スマートテーブル」はデイケアで活躍
作業療法アプリで「調理」のコンテンツを開くと、片麻痺の人が手に〝ナイフ〞を持って画面に現れる野菜を指示にそって切り、料理が完成する機能訓練ができたりする。
「スマートバランス」は、転倒予防にバランスの測定や歩行、立位、座位など動作の重心、移動などから転倒リスクを評価できる。これらは時系列で記録され、状態の改善度も計測でき、データ収集ができる。

重心移動から転倒リスクを分析できる「スマートバランス
これらスマート機器の普及は、経験則から脱却したケアの標準化や質の確保になり、さらに介護人材の不足を補うツールともなる。
病院のリハビリから地域のデイケアセンターに継続した時に、そこにリハ職が不在でも十分にリハが継続できるのもメリットの1つだと説明された。視察後、ぜひ日本でも導入をと勧められた次第。
前衆議院議員 山崎摩耶(やまざきまや) 略歴
訪問看護のレジェンドで制度創設に尽力。社会保障審議会・介護保険部会、介護給付費分科会等委員歴任。日本看護協会常任理事、日本訪問看護振興財団及び全国訪問看護事業協会常務理事、旭川医科大学客員教授、岩手県立大学看護学部教授、旭川大学特任教授歴任。2009年衆議院総選挙に北海道比例で初当選。2021年繰り上げ当選、衆議院議員2期を務める。主に厚生労働委員会等で活躍。海外視察をまとめた『世界はチャレンジにあふれているー高齢者ケアをめぐるヨーロッパ&中国紀行』(日本医療企画)等著書多数。