世田谷区で総合相談窓口開設 空き家、行政連携で抑制 NPO法人都民シルバーサポートセンター
NPO法人都民シルバーサポートセンター(東京都世田谷区)は、高齢者のさまざまな相談をワンストップで対応可能な窓口を設置している。2023年度は世田谷区の事業として空き家の発生防止に取り組んでいる。
専門家・企業をコーディネート
同法人は高齢者の住まい・介護・認知症・相続などさまざまな課題について無料で相談を受け付け、弁護士・司法書士・税理士などの各専門家や関連企業と連携して適切なサポートを提供する。「どこに相談すればいいかわからない」といったような複合的な課題もワンストップで解消可能なことが強みだ。理事長で行政書士の信夫武人氏が、高齢者の抱える課題が多様・複雑化し問題解決をするには1つの窓口で相談を受け、各専門家、関連企業をコーディネートする必要性を感じたことが法人設立のきっかけとなった。

信夫武人理事長
年間350件ほど相談が寄せられており、そのうち7割程度がソーシャルワーカー・ケアマネジャーなどの介護・医療関係者であるという。「身元保証人がいない」「介護のキーパーソンと連絡がとれない」「死去した後の葬儀や相続の問題について」などの相談が多い。
「特にケアマネジャーは担当する高齢者から、専門外のことも含めてさまざまな相談が寄せられ頭を悩ませている。そうした負担軽減に貢献できる」(信夫氏)
世田谷区の事業では法人の知見やネットワークを活かし、空き家の発生抑制を目指す。具体的には、地域包括支援センター・高齢者クラブ・区民センターら団体との連携によるセミナーなどの実施で、空き家の発生抑制や解消に必要な情報提供や、相談窓口対応などに取り組む(詳細は表参照)。
区が21年に実施した現地調査によると、区における空家等評価基準で空き家認定された建物は883棟。17年に行われた同様の調査から83棟減となっているものの、依然として多くの空き家が存在する。信夫氏は「区の施策で空き家は解消されているが、それと同等ペースで空き家が発生している」と現状を評する。
また、区の65歳以上の高齢者の約3割に相当する5.4万世帯が独居だ。今後も空き家の発生は続くと考えられている。
そこで空き家の所有者となりそうな人へのアプローチで予防に取り組むことで、空き家問題の抜本的な解決を図っていくのがこの事業の狙いだ。
「ゴミ屋敷化しているなどの理由で相談もできず、建物が放置されるケースも多い。この事業を通じ、まずは空き家の問題を抱えている人が相談しやすくなるよう情報発信につとめる」