デイ欠席率 大きく低下 音楽+体操でADL 維持・改善 社会福祉法人正和会<後編>
大型商業施設でコンサートも
9月6日号で紹介したように、社会福祉法人正和会(奈良県五條市)では、4名の音楽の専門家をレクリエーション専属スタッフとして雇用することで、質の高いレクの提供と、一般介護スタッフの業務負担軽減を実現している。後編の今回は、実際のレクの様子などを紹介する。
参加者の歌唱は原則として禁止
取材したのは2023年7月28日に行われたデイサービスでの音楽レク「歌声サロン」の様子。4名は、8月1日に市内にある大型ショッピングセンターで「懐メロコンサート」を開催することになっており、この日は、そこで演奏する楽曲を披露した。
法人とショッピングセンターは以前より関係が深く、新型コロナウイルス感染症が広がる前までは、一般の人向けにウクレレサロンを開催するなどしてきたという。
プログラムは45分間で、「リンゴの唄」「青い山脈」「青春時代」「ひょっこりひょうたん島」「涙そうそう」「美空ひばりメドレー」など全10曲の演奏を披露した。
各メンバーが複数の楽器を演奏できるので、ピアノ、フルート、アコーディオン、鍵盤ハーモニカ、台を手で叩くドラムスなど、曲ごとにさまざまな楽器が目まぐるしく登場し、参加者を飽きさせない。「千の風になって」では生田正美さんと貴師田三紀子さんの二重唱も披露された。
コロナ前は、参加者も交えて歌うことをメインにしたプログラム構成だったというが、今は感染拡大防止のため、全体の80%程度が演奏。歌唱については、「参加者が歌うのは基本禁止。ただし、自然に声が出てしまうのは仕方がない」という姿勢だ。

多彩な楽器で参加者を楽しませる
レクの最後には口腔体操を実施
また、音楽を楽しむだけでなく、ところどころに体操などを取り入れ、参加者のADL維持改善などに取り組んでいるのも特徴だ。冒頭で「三百六十五歩のマーチ」、途中で「恋のバカンス」に合わせた体操を行ったほか、最後には整理体操として、ピアノの伴奏に合わせて肩や首、腕などを回す運動を行ったり、口腔体操として頬を膨らませたり、舌を動かしたりした。
同法人が運営する介護老人保健施設「ルポゼまきの」の吉田勉施設長は、「4名体制での音楽レクを実施するようになってから、デイサービスの欠席率が減少しました。それだけレクを楽しみにしている利用者が多くいます」と語る。前日に利用者から「明日は音楽レクがあるのか。ないなら行かない」という問い合わせの電話がかかってくることもあるという。
4名に今後の活動目標を聞いたところ「メンバーを増やしたい」「もっと地域に向けた活動を行いたい」という声が返ってきた。
ちなみに8月1日のショッピングセンターのコンサートは、60部の歌詞カードが足りなくなるほどの盛況だったとのこと。「もしかしたら、秋にもまた声がかかるかもしれません」(生田さん)

ショッピングセンターでのコンサートの様子