就労B型、FCで拡大 PT・OT配置で差別化

2023年9月19日

就労支援サービスや訪問看護などを展開するリハス(旧:金沢QOL支援センター/石川県金沢市)は、就労継続支援B型「リハス」のフランチャイズ展開を強化する。2024年12月までに100拠点超を目指す計画だ。中重度・高齢障害者専門の支援を強みとし、差別化を図る。岩下琢也社長に話を聞いた。

 

 

リハス 岩下琢也社長

 

 

イオンで新規出店も

 

――今年で12期目を迎えましたが、起業のきっかけは
岩下 20代前半は、作業療法士として病院や高齢者施設で現場経験を積んだ。そこでは、20年間も入院生活を余儀なくされている人、退院後も社会復帰ができない人、社会復帰しても続けられずに自殺をしてしまう人などを目の当たりにした。働く意欲やスキルを持っていても、個人に合った活躍の場がないことに課題を感じていた。
 

「障がいがあっても、全ての人が自立した社会の実現」を目指し、2012年に地元である金沢でリハビリ型訪問看護を開始。14年には、在宅患者の社会復帰を支援するために、就労支援サービスに参入した。現在、訪問看護6ヵ所、就労移行支援4ヵ所、就労継続A型1ヵ所、B型23ヵ所(直営15ヵ所・FC8ヵ所)などを展開している。就労移行支援は、脳卒中・身体障害者専門。B型は商品開発の作業を行う「リハスワーク」と農福連携の「リハスファーム」の2つのブランドを展開している。

 

 

――近年は特に障害福祉事業を拡大している
岩下 厚生労働省は、企業の障害者雇用率を現在の2.3%から、26年には2.7%にすると発表しているが、その達成度は半数以下である。就職しても、障害者への理解が未熟な環境では定着できず、早期退職となるケースも多々ある現状だ。また、高齢化に相まって、障害者の年齢も高齢化している。当社の事業所でも50〜60代の利用者が増加している。このように、中重度・高齢障害者の受け皿の整備が急務であり、必要性が高まっている就労継続支援B型を拡大していく。

 

 

――B型はA型に比べて、事業所数も多いため、競合他社が多い市場ではないか
岩下 確かに事業所数は増加しているが、中重度・高齢障害者を専門としている事業者は多くはない。B型は障害の重い人が集まりやすいため、その人の既往歴や生活状況などを踏まえた支援・ノウハウが求められる。専門的な支援ができなければ、利用率も低下してしまうからだ。また、利用者の平均工賃によって基本報酬が連動することから、利用率の維持・向上は経営の観点からも、見過ごすことはできない。
 

当社の利用者の約8割は中重度障害者。在籍スタッフの約7割が医療・福祉専門職である強みを活かし、事業所にはPT・OTを配置。医療・介護が必要な利用者に合わせた生活活動支援と就労支援を実施することで、差別化を図っている。また、一般就労移行率の平均は1.1%(東京都福祉局・令和3年度調査)だが、当社は11%と業界水準よりも高い。B型であっても、利用者一人ひとりが一般就労を目指せるようにサポートしている。

 

 

――成長戦略について
岩下 「福祉が地域を支える社会の実現」というビジョンに向けて、リハスモデルを展開していく。21年より、FC展開を開始した。当社ではFCを「社会的事業」と捉えて「ソーシャルフランチャイズ(SFC)」と称し、直営がない地域でも積極的に開設を進める計画だ。各地域に精通したパートナーに運営してもらうことで、それぞれの地域ニーズや利用者にマッチした経営の推進ができるだろう。24年までに100拠点超を目指す。

 

 

――訴求したい業界は
岩下 すでに出店している加盟店の業界は、介護・医療・保育をはじめ、飲食や不動産など。特に最もシナジーの高い介護事業者に訴求したい。B型は、介護保険の第2被保険者の年齢層の割合が高く、介護保険との併用も可能だからだ。
 

また、各分野の企業とも連携していく。昨年はイオンモールと提携し、埼玉・富山・石川にあるイオン内にリハスワークを開所した。日常生活のなかで馴染深い商業施設内にあることで、精神的ハードルが低く、利便性も高いため、利用者や送り迎えをする家族からも喜ばれている。
 

今月1日には、宇都宮ステーション開発が運営する、茨城県古河市のJR古河駅に直結するショッピングモール「VAL古河」にリハスワークを開所した。各会社の経営リソースを活用し、アライアンス共創による中長期的な事業シナジーの創出及び事業拡大を進める。25年にはIPOも目指す。

 

リハスワークの利用者

 

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