【書評】認知症の人の「かたくなな気持ち」が驚くほどすーっと穏やかになる接し方/評:浅川澄一氏

藤原るか著
坂本孝輔著
すばる舎
1,540円(税込)

介護者が伝える「生」の認知症ケア
著者の藤原るかさんは、介護保険制度が始まる前からヘルパーに従事してきた。ヘルパー一筋の強者である。
「ヘルパーの賃金は不当に切り下げられている。移動や待機、それにキャンセル時に、労働基準法どおりに賃金保障がされていない。介護保険法はおかしい」として2人のヘルパーと共に、国を相手に損害賠償訴訟を起こしている最中だ。話題の人である。
もう一人の著者、坂本孝輔さんは、特養やグループホームなどを経て、認知症介護指導者になり、今は東京都内でデイサービスを運営している。執筆前に藤原さんから、認知症ケアの理論的なアドバイスをして欲しいと頼まれ、共著者となった。
認知症ケアの現場に精通した2人が、これまでの豊富な体験と深い洞察を披露したのが本書ということだ。とてもやさしい言葉で読者に語りかけるように綴られている。
医療を振りかざす「先生」たちのお言葉とは違う。生の息遣いが伝わる。何よりもひとつひとつの「困難事例」が具体的で読みやすい。
「デイサービスに行きたくない」「トイレはまだ必要でない」など認知症の方たちの「介護拒否」「かたくなな気持ち」に真正面から向き合い、その時の接し方を説く。認知症の人たち特有のさまざまの「困った」場面をとりあげ、その原因と対応法をじっくり考える。
評者が印象に残ったのは、認知症の人たちの気持ちに入り込むことの大切さだ。
坂本さんは「あなたの力が必要」「あなたの存在がないと困る」というメッセージを伝えること重要と言う。「いつも誰かに頼られる役割」は誰にでもあること。
「社会性」であり「尊厳の保持」である。施行5年後の介護保険法に「尊厳」が加えられ、認知症ケアの出発点が整った。社会の中で、自身が果たすべき役割、それが人間の尊厳の尊重に通じる。そのうえで本人の心を読み解く。
本書のタイトルの「かたくなさ」は、尊厳を蔑ろにされたときに、心の奥から浮上してくる。いわば当事者からの「抵抗」であり、「反発」である。心は生きているから、当然のことだ。
項目ごとに描かれる4コマ漫画がいい。介護者と当事者との応対を巧みに表現していて思わず膝を打つ。描き手も現役の介護士。さすがである。
評:ジャーナリスト 浅川澄一氏









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