2024年2月14日号  15面 掲載

【書評】どうせ死ぬんだから 好きなことだけやって寿命を使い切る/評:浅川澄一氏

2024年2月18日

どうせ死ぬんだから 好きなことだけやって寿命を使い切る

和田秀樹著
SBクリエイティブ
1,430円(税込)

 

 

 

認知症は老化現象、病気ではない
 

著者は高齢者専門の精神科医。東京都杉並区の浴風会病院などで35年余り、6000人以上を診察してきた。著書は多く、「80歳の壁」は2022年のベストセラー総合1位(日販調べ)になった。
 

本書のテーマは死。日本では、死なせない医療の「常識」が国民の心を捉えている。そのため健康に気遣い過ぎる風潮がまん延。とりわけ、高齢者たちに。それらを否定的に捉え「今の生活をもっと楽しめ」と主張する。
 

筆者が最も共感したのは、「認知症は病気ではない」と断言していること。では何か。「老化現象のひとつ」だと言う。「足腰が弱り、視力や聴力が衰えるのと同じことです」と説明する。分かり易い謎解きだ。その通りだと思う。
 

続けて、老化現象だから「脳の変性は避けられない」「誰にでも訪れる」。だから「なったら、なったときのこと、と開き直るしかない」と説く。
 

生物は必ず死を迎える。そのゴールを見据えれば、老衰が自然の流れだと分かるはず。だが、心身全体でなく臓器別診療に特化した今の医療界はそんな道筋を公にしたがらない。
 

認知症病気説をきちんと否定した医師は数少ない。大井玄東大名誉教授は「長生きに伴う心身の『障害』」とし、松下正明東大名誉教授も「脳の老化現象の促進された状態」と記した。だが、大半の医師たちは「認知症という病気は・・・・」と疑問もなく話す。
 

延命主義を見直し、「長生きして何がしたいか」が重要と繰り返す。「多少早く死んでも、今の生を充実させたい」と自身の生き方を開陳。自らの血圧や血糖値を記して高めでも構わないと強調、健康診断には行かず、喫煙者も許容。コロナ禍での延命措置は、老衰死(尊厳死)への政策誘導を「吹き飛ばし」、望まない延命治療へと「逆戻り」させたと糾弾する。
 

コロナ対策の自粛要請にも疑問を投げかけ、移動や会話の禁止は基本的人権侵害とも記す。ブレのない主張は多くの国民の「本音」をまとめ上げたとも言えるだろう。
 

認知症になったら軽いうちの施設入居を勧めるのもその好例。在宅至上主義ではない。介護家族が「心の許容量」を超えて本人を嫌いになる前に、との判断からだ。生活者としての本音でもある。医療界の一員として正面から弓を引き難い立場からの発言だけにもっと注目されていい。

 

評:ジャーナリスト 浅川澄一氏

 

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