2024年3月13日号  15面 掲載

【書評】過剰医療の構造 生命至上主義が「過剰医療」を加速/評:浅川澄一氏

2024年3月17日

藤井聡編著
ビジネス社
1,700円(税別)

 

 

 

生命至上主義が「過剰医療」を加速
 

ドキッとさせる書名である。過剰医療とは何か。
 

「本来求められる適切な水準を超えて行われる医療行為」だという。具体的には、施さなくてもよい治療行為をはじめ入院不要な患者の入院、必要以上の通院、過剰服薬、必要以上の日常生活の制限などである。
 

本書に登場する執筆者や討論者は医師や研究者など11人。その中で、対談や鼎談の進行役となり、最も長文の論文を寄せているのは編著者の藤井聡・京都大学大学院教授である。本書の主導者といえるだろう。
 

藤井教授は、専門のリスク管理学の立場から政府のコロナ対策に疑問を抱き、「ゼロコロナ」を唱える医療界の言説は「過剰」と批判してきた。そこへ、森田洋之医師が自身の診療所でのコロナ診療の高額報酬を公表したことで、医療界の「儲けぶり」を知る。「慢性期医療では需要が作られる」との証言も得る。
 

また、医師たち453人への独自のアンケート調査で「不要だが経営上求められる治療や投薬」「病院が満床を目指している」と答えた割合が高かった。
 

こうしたことなどでコロナ期だけでなく、医療界の構造的な問題として過剰医療が実証されたとする。その原因として、臓器別の専門医制度や命に拘る生命至上主義、医師と患者の知識の非対称性、自己負担の少ない医療保険制度を上げる。
 

結果として、過剰医療が膨大な医療費を生むと慨嘆。医療行為が適正水準を超えると健康を悪化させるとも説く。
 

批判だけではなく藤井教授は改革案を示す。生命至上主義には尊厳死の考え方を対置させ、金儲け主義には公立病院の拡大と医師の公務員化を訴え、そして医療保険の事後還付制度の導入である。欧米諸国との違いを指摘しているようで、適切な提案だろう。
 

なかでも、国民の意識転換を問う終末期医療に関わる生命至上主義を取り上げたのは拍手だ。「命は地球より重い」というフレーズには抗し難い。だがそれで正当化される延命措置への疑問の声は広がりつつある。
 

一般的に医師の言説にはなかなか反論し難い。政府の施策に関わる医師たちに真っ向から異を唱え、論争で議論が深まるのは良いことだ。本書ではコロナワクチンやがん検診、薬剤などの問題点も浮き彫りにされ、「異論」を知るには格好の手がかりとなりそうだ。

評:ジャーナリスト 浅川澄一氏

 

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