2025年1月1・8日号 35面 掲載
【書評】在宅医療 治し支える医療の概念と実践/評:浅川澄一氏

【監修】横倉義武/大島伸一/辻哲夫/新田國夫【編集】蘆野吉和/大田秀樹
中央法規
4,180円(税込)

医学生向け、「在宅医療」の教科書
「治す医療」から「治し支える医療」への転換が明記された社会保障制度改革国民会議の報告書から11年経つ。「治す」のは病院だったが、「支える」が加わり在宅医療の出番が正式に到来した。在宅医療は病院医療と何が違うのか。その答えを、本書は理論と歴史的変遷、それに構造まで網羅して一挙に紐解いた。
本文にある「医学生の皆さん」という呼びかけから明らかのように、次世代に向けての教科書のような構成だ。監修者は横倉義武・日本医師会名誉会長、大島伸一・国立長寿医療研究センター名誉総長、辻哲夫・元厚労省事務次官、新田國夫・日本在宅ケアアライアンス理事長の4人。重鎮が並ぶ。
主な執筆者は辻哲夫氏のほか蘆野吉和・元日本在宅医療連合学会代表理事、太田秀樹・全国在宅療養支援医協会事務総長で、「病院完結型から地域完結型の医療への展開の歴史」「看取り」「『支える』という意味と意思決定の構造」「多職種連携」などのテーマで論じている。
国立長寿医療研究センターの三浦久幸氏が「ACP」を高橋昭彦ひばりクリニック院長が「小児在宅医療の現状」を語る。さらに黒岩卓夫、草場鉄周、垣添忠生、佐藤美穂子などの各氏がコラムを執筆。在宅医療の実践者、研究者などの著名人が勢ぞろいし総勢25人。275頁に及び、内容と同様にずしりと重い。
通底するキーワードは、「QOL」であり「地域包括ケア」である。その担い手、しかも主役となるのがかかりつけ医、在宅医と断言する。業界挙げての意気軒高ぶりが伝わってくる。
これだけの豪華本だけに注文も付けたくなる。コロナ禍を契機に大議論を呼んだかかりつけ医のあるべき姿への踏み込みが今一つだ。各論者が称賛する地域包括ケアでは、医療や介護、生活支援など各サービスは中学校圏域での地域完結を目指し、現行の医療のフリーアクセスとは矛盾する。患者側の遠隔地への大病院志向を支えているのが日本特有のフリーアクセス制。かかりつけ医の認定制や登録制が進めば、地域密着が徹底し、地域包括ケアに近づくはずだったがとん挫した。
もう一つ気がかりなのは、認知症ケアへの記述が薄いこと。「具体的な症例を用いた演習」の中で、6症例の一つとして挙げているが、これだけでは寂しい。
評:ジャーナリスト 浅川澄一氏










