2025年2月12日号  8面 掲載

「徘徊」という言葉 介護者でなく本人主体の表現へ/女優・介護士・看護師 北原佐和子氏

2025年2月15日

 

「徘徊」とは「目的もなく、うろうろと歩き回ること」(大辞林)「どこともなく歩きまわること」(広辞苑)。私は認知症の方の外出には、その人なりの目的があると、介護従事をしたときから教えられてきた。散歩したかったのか、買い物をするために家を出たのか、友人のお宅にでも行きたかったか。目的はそれぞれだが、出るときはその目的を遂行するために靴を履き玄関を出たのだ。

 

ところが、途中で目的を忘れたり道に迷ったりして、目的の場所どころか自分の居場所が分からなくなり、さまよい歩き近所の方に見つけてもらったり警察に保護されたりということにつながる。

 

認知症の初期診断を受けている方の体験談では、「散歩中に自分がどこにいるか分からなくなった経験があるが、自分は散歩という目的を持って出かけた。だが道が分からなくなり怖い思いをした。でも家に帰らなければと意識していた。だから徘徊ではない」と言っていた。私は迷っている。自宅に帰りたい、または目的の場所をきちんと伝えることはできないかもしれないが自分の中では、目的があって玄関を出てきたわけである。そう考えると「徘徊」ではないことを私達にも理解できる。

 

ならば、どんな言葉で記録に残せばいいのですかとスタッフからはよく聞かれる。適切な言い換え表現がないし、記録を記入するスペースを考えると端的に伝える必要があるという。だが、徘徊は私たち目線の言葉。スタッフ間の情報共有のために本人の意にそぐわないであろう言葉を使うことなど、それこそ記録とは言わないし、そんな情報共有などしても意味がないように思う。

 

最近では適した言葉を模索して「徘徊」は使用せず「ひとり歩き」などに言い換える自治体も増えてきている。2015年の福岡県大牟田市が先駆けで兵庫県や東京都国立市、鳥取県米子市が次々と「徘徊」の使用をやめ、認知症の方への理解が高まっている。だが、9年も前に始めている所もありながら理解はなかなか広がらない。

 

私たちケアマネジャーがプランの作成に必要とするアセスメントシートには徘徊症状のチェック項目がある。このチェック項目が外れた時に、初めてスタッフの目線も変わるのかもしれない。

 

 

 

女優・介護士・看護師 北原佐和子氏

1964年3月19日埼玉生まれ。
1982年歌手としてデビュー。その後、映画・ドラマ・舞台を中心に活動。その傍ら、介護に興味を持ち、2005年にヘルパー2級資格を取得、福祉現場を12年余り経験。14年に介護福祉士、16年にはケアマネジャー取得。「いのちと心の朗読会」を小中学校や病院などで開催している。著書に「女優が実践した魔法の声掛け」「ケアマネ女優の実践ノート」

 

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