2025年2月26日号  6面 掲載

【書評】高齢者が急性期病院に殺されないために知っておくべきこと/評:武藤正樹氏

2025年3月2日

武久洋三著

幻冬舎

税込1760

 

 

 

高齢者向け救急の改革

 

いまや急性期病床の67割が75歳以上の後期高齢者で埋め尽くされている。この割合はこれからますます増えて78割にもなるだろう。しかし急性期病床はこの後期高齢者の入院患者の激増に適切に対応しているとはとても言えない。本書を著した武久洋三氏は「現在の急性期病院が無意識に行っている行為が高齢者の体力を弱め、免疫力を低下させ、最終的には高齢者の命の危険にさらしている」と言う。

 

たしかに急性期医療では治療に専念するあまり、高齢者の心身の特性への配慮が欠けている。制度もそれに追いついていない。高齢者は46人部屋に押し込められ同室者に気を使って夜も眠れない、食事も好みにあったものが食べられない、治療が優先でリハビリも行われない、さらに安全のためベッドに抑制される。こうして高齢者は入院中にあっという間に要介護状態になり認知症も進む。まさに武久氏が言う「急性期医療とは医原性身体環境破壊装置」という言葉がぴったりだ。

 

こうした反省にたって厚生労働省は、2024年診療報酬改定で「地域包括医療病棟」という、高齢者救急を受け入れる専用病棟を新設した。趣旨は高齢者の救急患者などを受け入れ、早期からリハビリ、栄養管理を行い、入退院支援により速やかな在宅復帰を促すこととした。まさに高齢者の急性期医療の理想を描いた病棟と言える。ただ開けてみたらあまりにその数が少ないのに驚いた。理由はその認定要件が厳しすぎることだ。専任のリハビリスタッフ、21日の平均在院日数、重症度、医療看護必要度の基準などハードルが高い。目指す理想が高いのは良いけれど、だれも手上げをしないのでは「絵に描いた餅」だ。次回改定では急性期病床から移行を促すため、緩やかなスロープを設けるなど要件緩和を行うべきだ。

 

コロナ前に武久氏が経営する徳島の平成記念病院を訪問する機会があった。武久氏の理念は「患者を絶対に見捨てないこと」だ。病院の中にネコ屋敷があったのには驚いた。患者さんがお亡くなりになったあと引き取り手のないネコを集めた部屋だ。武久氏の部屋にも数匹のネコが闊歩していた。「ネコも見捨てない」と言う。いつもは強面の武久氏の心やさしい一面をみて感動した。

評:社会福祉法人日本医療伝道会衣笠病院 武藤正樹氏

 

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