2025年4月2・9日号  27面 掲載

【書評】かかりつけ医機能と感染症有事/評:浅川澄一氏

2025年4月6日

 

森井大一著
勁草書房
3,740円(税込)

 

 

 

英仏独日の「コロナ医療」を比較

 

コロナ禍での医療機関の逼迫を受けて、かかりつけ医機能の見直し、制度化をめぐり議論が沸騰した。登録制と認定制の制度化は見送られたが、欧州のGP(家庭医)との違いなど争点はくすぶり続けた。

 

そこで登録制などに反対した日本医師会は2023年の5月、イギリス、ドイツ、フランスの3カ国への調査団を派遣した。その実務を担ったのが、著者の日本医師会総合政策研究機構主席研究員の森井大一さんだ。

 

現地調査の結果、「かかりつけ医制度はコロナの対応に役立たなかった」と冒頭に記す。この結論がどのようにして導き出されたのか。多くの医療専門家などへの詳細なヒアリングを基に論じられる。

 

3カ国でかかりつけ医制度の違いは大きい。国営の登録制が根付いているイギリス、登録制のないドイツ、両国の間に位置するフランス。コロナ対応はドイツが最も成功したと著者は評価する。評価の低いイギリスは、平時の医療そのものが問題だと突く。「日常的な医療崩壊」が起きており、コロナ時に患者が病院に殺到。入院待機者が多大になったと説く。

 

そもそも、イギリスのGPは、「雇用や住居、借金、孤独」などの相談も受け、「彼氏と別れてつらい」と訴える患者もいるという。「よろず相談所」と酷評する。

 

一方ドイツでは、病院は重症者に専念でき、コロナでの人口当たり死亡者が最も少なかった。訪問調査で何度も「20分の19」と言われた。コロナ受診患者の20人のうち19人は開業医が診察したということだ。

 

なぜできたのか。「コロナを『特別な疾患』と位置づけなかった」と解き明かす。加えて、所得補償と応召義務が背を押した。ドイツの応召義務は、違反すると保険医資格を失うという。

 

ところが日本の応召義務は違う、と筆者は強調する。国に対しての公法上の義務に過ぎない。そのうえ厚労省はコロナ直前の2019年12月に医政局長通知で実質的に応召義務を免除していたと指摘する。驚きだ。

 

こうして、ドイツでは開業医が通常通りにコロナ患者に対応した。「特別な病気」とした日本の医療界との相違を訴える。その通りだろう。

 

だが、コロナ対応を論拠に登録制を否定し、フリーアクセスの堅持につなげるのはどうだろうか。モヤモヤ感が残る。

評:ジャーナリスト 浅川澄一氏

 

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