2025年7月2日号 4面 掲載
【介護経営者カンファレンスセミナーレポート】資金繰り認識不足が命取りに 経営情報の公開で介護業界は何が変わるのか?
高齢者住宅新聞社は6月20日、「第1回介護経営者カンファレンス」を開催。介護事業者、経営層らが多数来場した。当日は、3会場で計13のセミナー・シンポジウムを行った。今号より複数回にわたり、セミナーレポートを掲載する。
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川原経営総合センター福祉経営コンサルティング部 田中律子副部長
経営情報の見える化が進む中、財務指標をどう読み取り行動に移すかが介護事業者の生死を分ける。川原経営総合センターの田中律子氏は、ある社会福祉法人が解散に至った経緯を詳細に分析した。
事例としたのは、秋田県内で特別養護老人ホームなどを運営していた社会福祉法人。今年3月末に廃業した同法人は設立から約40年間地域福祉を支えてきたが、近年の財務状況には赤信号が灯っていた。
特に23年度では、サービス活動収益が約2億8000万円であるのに対し、支出が3億6000万円超、経常赤字は6600万円以上。人件費率は88.7%と高止まりし、借入金返済の負担が資金繰りを圧迫していた。田中氏は「資金繰りの認識が不十分なまま設備投資の返済計画を立てた結果、運転資金を借入で賄うしかなくなった。返済額を正確に把握した、慎重な事業計画が必要だった」と分析した。
さらに、現場での判断についても「当時は職員離職を受けて2名を追加採用している。職員数の維持を優先したあまり、法人の存続という根本的な視点が希薄になってしまったのでは」と言及。「目に見える指標」の背後にあるリスクをどう判断するかという経営管理能力の重要性を説いた。