2025年7月9日号 7面 掲載
【介護経営者カンファレンスセミナーレポート】AI、現場に本格実装開始 DXトップランナーが事例紹介
巡視効率化に貢献規制緩和望む声も
介護記録や請求といった間接業務、夜間巡視などのオペレーション領域において、ICTや介護ロボットを活用して生産性を高め、最終的には利用者へのケアの質向上を目指す。これが「介護DX」が目指す姿だ。
アズパートナーズ(東京都千代田区)は首都圏で介護付きホーム「アズハイム」を30棟運営。2017年からDXの全体最適化を図るオペレーションシステム「EGAO link」を導入している。パラマウントベッドの眠りSCAN、ナースコール、記録業務を、職員のiPhone1台で完結できる体制を構築。夜間の巡視もセンサーで代替し、職員の2時間の休憩時間を確保している。また、AIによるケアプラン作成やBIツールによるデータ連携を通じて、業務効率化とケアの質向上を同時に達成した。

アズパートナーズ 植村健志社長
チャーム・ケア・コーポレーション(大阪市)は、近畿・首都圏で105施設を運営。17年にDXの取り組みを開始し、まずは既存業務の分析から着手。21年からは眠りSCANやAI作成サービスなどの導入を進め、これまでに総額12億円を投じてきた。結果、従来と比べて約2割の人員効率化を果たした。実証実験では3対0・9の人員配置基準も達成し、投資に見合う成果が得られている。

チャーム・ケア・コーポレーション 小梶史朗社長
社会福祉法人善光会(東京都大田区)は、紙やPHSを廃止し、スマートフォン・タブレットでの記録、内外線・インカム・センサー情報の一元管理を進めている。介護ロボットも活用しながら、業界全体のDX推進に取り組む。同法人から派生した株式会社である善光総合研究所では、中小事業者向けに介護情報管理システム「SCOP」を無償提供。「スマート介護士」資格制度による人材育成にも力を注いでいる。

社会福祉法人善光会 宮本隆史常務理事
介護テクノロジーの進化は目覚ましく、AIの活用も日進月歩だ。アズパートナーズの植村健志社長は、「夜間60人の利用者に対し職員2人でケアするモデルを公開するなど、若手が活躍する〝新しい介護〞を発信していく」と展望を語る。
チャーム・ケア・コーポレーションの小梶史朗社長は、DX推進により高まった付加価値労働生産性(1人当たりの粗利)を原資に、「一般職で年収600万円、施設長で800万〜1000万円を目指す」と処遇改善に意欲を見せる。善光会の宮本隆史常務理事は、「日中韓の連携を通じて、日本の介護ノウハウを輸出していく」と語った。