2025年7月16日号  5面 掲載

【介護経営者カンファレンスセミナーレポート】地域ニーズに多角化 社会福祉法人の未来デザイン

2025年7月22日

 

高齢者住宅新聞社は6月20日、「第1回介護経営者カンファレンス」を開催。介護事業者、経営層らが多数来場した。当日は3会場で計13のセミナー・シンポジウムを実施。セミナーレポートを掲載する。

 

 

シンポジウムの様子

 

 

多世代集う福祉拠点 官民連携の好事例に

 

超高齢社会の進展が加速する中、地域とともに歩む社会福祉法人が注目されている。社会福祉法人しんまち元気村(群馬県高崎市)と社会福祉法人一燈会(神奈川県二宮町)は、従来の福祉の枠を超えた取り組みを進める。両法人の経営者が現場での実践と今後の展望を語った。

 

両法人は介護のほか、医療、飲食、美容、不動産事業なども手がけ、地域のニーズに応えている。しんまち元気村は2002年創立。現在は32拠点・46事業を展開している。特養から始まり、薬局や給食事業、不動産、コンサティングまで幅広い。社会福祉法人一燈会も、介護・障害・児童福祉に加えて、農業や鍼灸、リハビリまで展開。「必要なものは自分たちで用意するという考えで進めてきた」(山室淳氏)

 

 

社会福祉法人一燈会 山室淳理事長

 

 

外国人や障害者の雇用にも早くから取り組んできた。山室氏は「実習生だけでなく、海外の大学と連携して、現地で日本語教育や資格支援も行っている。今は50人ほどの外国人スタッフが働いており、今後100人まで増やす予定」と説明。しんまち元気村の八木大輔氏も「就労継続支援A型事業所で、昨年は3000万円の利益を出せた。障害と高齢の福祉を組み合わせることで、新しい可能性が見えてきた」と話す。

 

しんまち元気村が運営する「Domani TAKASAKI」は、8000平米の敷地に特養、クリニック、薬局、レストラン、美容室などが集まる複合施設だ。八木氏は「高齢者に対応しているだけでは地域の期待に応えきれないと考え、若い人も訪れたくなるように美容室や飲食店もつけた。単なる収益目的でなく、人が集まる場をつくるため」と言及。大規模開発であり、高崎市とも何度も話し合い進めたという。社福と行政、株式会社が一体で行った先進事例といえる。

 

 

社会福祉法人しんまち元気村 八木大輔常務理事

 

 

「障害福祉事業開始時は反対もあった」と山室氏。しかし地域住民などに説明を重ねたところ、正しい理解を得ることができた。「今では、中学生の職場体験や出前授業も手掛けている」と話す。八木氏は「『インクルーシブ』という言葉を使わずとも、地域の声を拾い続けた結果、自然と多様な人が関わる形になった」と述べた。

 

これからの社福に求められるのは、サービス提供にとどまらず地域を動かす立場になること。「内製化と多角化が重要になる。単一事業では限界がある」と八木氏。一燈会は売上4億円の時代を経て、地域の声に応え続けて10倍以上に成長してきた。垣根を越えて地域とつながる取り組みが、次の時代の社会福祉法人の姿を示している。

 

 

 

 

 

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