2025年10月8日号  8面 掲載

アイドル歌手が介護職になるまで/女優・介護士・看護師 北原佐和子氏

2025年10月12日

 

悩み苦しんだ30代、転機を迎える

 

現在私は61歳。41歳の11月にヘルパー2級の資格を取得してから今年で20年となる。自分の人生プランとして7年でケアマネジャーの業務に就くことを目標としていたが、その3倍近くの時間を要した。

 

私は小泉今日子さんや、松本伊代さんとともに「花の82年組」でアイドル歌手としてデビューした。デビューと同時に俳優業もしてきた。時代劇や2時間ドラマ、昼の情念ドラマ『牡丹と薔薇』などに出演しながら「いつまでも仕事があると思うな」という強迫観念が常にあった。レギュラー番組が入ると寝る間もなくなるのに、数ヵ月仕事がない時もある。今思うと特に30代は「どう生きていいのか途方に暮れていた」と思う。自分を追い詰め1人寂しく涙を流すことも、その気持ちを誰かに伝える術も持っていなかった。

 

だが、この頃から舞台の仕事が増え、観客の生の反応や拍手喝采は、アイドル時代の親衛隊のコール「LOVE北原佐和子!」と声援を送られるのに匹敵する喜びと興奮を感じた。だから「女優業は止めない」は必然。俳優業の隙間時間で収入につながることをしたい。それはいったいなんだろうと考えつつ時間だけが過ぎていった代、悩み苦しみを抱えた30代だった。

 

そのなかで幼少の頃に見かけた視覚障害者の方、20代で出会った四肢麻痺の方、友人のダウン症のお子さんとの出会い。この出会いの一つ一つが歳月は経っても鮮明に蘇る。そもそも私は利他精神が強いのか。ある日「福祉」に携わりたいと、41歳でヘルパー2級の資格を取得した。

 

資格取得は2週間、毎日5時間ほどの座学を受ける。10代から芸能界で生きてきて、学生以来の学びの時間に馴染めるかドキドキだったが、毎日が新鮮で友達もできた。卒業後、友人は在宅ヘルパー、私は施設スタッフとして働き情報交換をした。私の施設は認知症対応型の宅老所。民家を改装した建物で食事は全て手作り。ご飯やみそ汁の香り、野菜を切る包丁の音など生活音が耳に入り、自宅にいるような生活感あふれる施設だ。アイドル時代の経験から同世代に囲まれることには慣れていたが、70~100歳近い高齢者に囲まれ、「この若造は何者だ!」、という厳しい眼差しには慣れるまでに時間を要した。

 

 

 

女優・介護士・看護師 北原佐和子氏

1964年3月19日埼玉生まれ。
1982年歌手としてデビュー。その後、映画・ドラマ・舞台を中心に活動。その傍ら、介護に興味を持ち、2005年にヘルパー2級資格を取得、福祉現場を12年余り経験。14年に介護福祉士、16年にはケアマネジャー取得。「いのちと心の朗読会」を小中学校や病院などで開催している。著書に「女優が実践した魔法の声掛け」「ケアマネ女優の実践ノート」

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