2025年11月12日号 15面 掲載
【書評】介護・老後で困る前に読む本/評:浅川澄一氏

吉田肇著
NHK出版
1,600円(税別)

親子世帯間で早めの話し合いを
著者の吉田肇さんは大手住宅メーカー、ミサワホームに入社後、定住型別荘の営業を経て介護事業に取り組んできた。1993年の介護専用型有料老人ホーム「マザアス南柏」(千葉県)の開設を皮切りに、様々の高齢者ケア施設や在宅サービスを手掛ける。
全国各地でのセミナーでは、高齢者やその家族から多数の相談を受けた。事業経営者としての顔だけでなく、利用者の複雑な心のうちを熟知するようになる。そうした現場の「本音」を踏まえて、老齢期に向けての数多くの備え方、アドバイスをまとめたのが本書だ。
介護・医療から始まり、住まいや買い物、お金、地域でのつきあいなど暮らしを支える要素を次々点検していく。
高齢者本人だけでなく、その子供世帯をも常に念頭に置きながら筆を進める。というのも、親子両世代は必ずしも同じ考え方ではないことが多いからだ。とりわけ資産や死生観に関わることは話しづらい。
その心のハードルを下げて、親子で話し合い、合意点を見出そうと呼びかける。それも、なるべく早く。元気なうちから。話のきっかけに、遠い親戚まで含めた大きな家系図を親子で一緒に作ってはとも説く。
かかりつけ医や信頼できるご近所さんを早めに見つけておこう。これにも膝を打つ。いざというときに駆けつけてくれる人の存在は大きい。
介護保険など法制度による仕組みを分かりやすく解説、具体的なケースを挙げながらうまくいった事例やそうでない事例が列挙される。
老人ホームの良し悪しの見分け方に、トイレの清潔度と並んで、見学後の見送り時に責任者が挨拶に出て来るかどうかもあるという。老いへの心構えとしてエンディングノートの活用がよく言われるが、著者は人生のこれからを自身で記す「未来ノート」を提案する。誰とどのように暮らしたいか、などを書く。いいアイデアだ。
96歳の母親と同居している著者自身の体験も披露。訪問介護やデイサービスの日を書き込んだカレンダーやかかりつけ医の連絡先を書いたノートなどを電話近くに揃えている。その一角の自宅写真も。有言実行ぶりがよく分かり説得力がある。
一つひとつのアイデアに納得がいく。上から目線でない、読者と同じ生活者としての視点なのがいい感じだ。
評:ジャーナリスト 浅川澄一氏










