2026年1月7日号 1面 掲載
【特集◇特養の分岐点①】医療対応拡充へ 地方・過疎地の再編加速

地域の介護インフラの要として行政主導で整備が進められてきた特別養護老人ホームの経営状況は今、全国的に厳しい。地方・過疎地では人口減少に伴う再編が進むとみられるが、一方で後期高齢者は2050年代にピークを迎え、看取り場所の需要は依然増え続ける。外部環境やニーズの変化にいかに対応すれば経営を上向かせることができるか、各法人の声を聞きながら考察する。
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特養を地域のランドマークに(写真提供:社会福祉法人三篠会)
特養の総数は23年度時点で1万606棟(厚生労働省25年1月公表)。TRデータテクノロジーによると、24年の特養新設数は124。首都圏や大阪を中心に、札幌、仙台、新潟、広島、福岡など地方都市でも数棟開設されている。
厚労省によると23年度の特養総数は前年度より44施設増。22年の新設数は108施設だったことから、統廃合も一定数あることが伺える。
厚労省が25年11月26日に公表した24年度の経営概況調査では、約4割の特養が赤字であることが分かった。収支差率の平均は1.4%で、前年度比で0.1ポイント上昇しているものの、低迷している。
25年9月に公表された福祉医療機構(WAM)の特養の経営状況調査によると、25年度上半期のサービス活動収益が「前年度より増加」と見込む施設は16.1%にとどまり、「減少」とする施設が16.8%。収益増加の理由、収益減少の理由双方で「利用者数の増減」が突出して多かった。
地域別では、都市部(1級地)では収支DI(「黒字」と回答した施設数︱「赤字」と回答した施設数)がマイナス14。都市部でも収支に苦戦する。
TRデータテクノロジーでは、過去15年間で人口減少が進む66の自治体(町村除く)を抽出。これらの自治体の中にある民間の老人ホームの入居率平均を縦軸、自治体内の特養の入居率平均を横軸とし、各自治体をチャート上にプロットした(下図)。

出所 : TRデータテクノロジー
民間ホームの稼働率が高い自治体は特養の稼働率も高い群が多数だが、民間ホームが90%以上でも、特養の稼働率が90%以下も複数ある。特養だけ高稼働な自治体は少ない。
特養の稼働率でみると、業界平均の約95%(TRデータテクノロジー)未満の自治体が25。人口が減少する自治体の4分の3は平均以上の水準を維持するものの、4分の1は平均以下となっている。90%以下の自治体も14ある状況だ。
「特養の廃業は人材不足によるものという声も多いが、地方を中心に利用者がおらず苦戦している特養はたくさんある。多くの特養の廃業はすぐそこに迫っている」と湖山医療福祉グループの湖山泰成代表は危機感を示す。「首都圏の横浜市ですら、新規の特養が過当競争で埋まらないのは有名な話だ」と湖山代表。待機者と実態の乖離も指摘する。重複での申し込みをしている人や既に亡くなっている人、入院している人などが含まれ、実態より多く見積もられている可能性があるという。今回ヒアリングした複数の社会福祉法人も、待機者数が減っていると答えた法人が多数だった。
地方では今後、人口減少は避けられない。合併や連携など、施設内の経営改善にとどまらない経営判断が迫られている。
再編以前に、特養が経営改善のために法人単位で取り組めるのは、集客(稼働率向上)、加算取得がメインになるだろう。コスト対策も考えられるが、補足給付の利用者割合が多い傾向にある特養では基準額以上の値上げが難しいのが実情だ。
「待っていれば自然と次の入居者が決まる時代は終わりつつある。発信力を強めなければならない」と全国老人福祉施設協議会の小泉立志副会長は語る。
前提として、特養は利用者に何を期待されているのか。特養は要介護度の高い人を受け入れ、看取り場所としての役割を担ってきた。特養退所者のうち7割が死亡による退所。死亡退所が全体の過半数前後の介護付有老や住宅型有老、サ高住より多い(TRデータテクノロジー)。終末期に特化した低価格帯の民間ホームが増えているとはいえ、特養が看取りの役割を担っていくことに変わりはない。
ただし、老人ホームの増加や在宅介護期間の延長などを背景に、特養入居者はより高齢化し、医療依存度が高まっている傾向にある。特養の医療提供体制を改めて考え直すタイミングに来ている。
(②に続く)

医療連携は業界の課題(写真提供:社会福祉法人白寿会)












