2026年3月11日号 7面 掲載
働き盛り世代の悩み/女優・介護士・看護師 北原佐和子氏

親の介護、経済面に不安
私たちの世代に重くのしかかる親の介護は、体力的にも、経済的にも相当な負担となる。介護と仕事の両立の難しさを感じるが、働かなければそれこそ、介護が必要な90代の親と暮らす生活も立ち行かなくなる。最近、ケアマネジャーとしていろいろな家庭と関わる中で将来に一抹の不安を感じる。そろそろ、自身も現実のこととして考えなければいけないタイミングなのかもしれない。
Aさんを通じてより現実のこととして考えるようになった。Aさんは、緑内障からの視覚障害で視力低下が著しく、最近ではほとんど目が見えない。Aさんは夫と長女家族と暮らしているが、逆に夫は耳がほとんど聞こえない。長女家族が上階に住み、1階リビングに面したところにAさん夫妻の寝室がある。深夜にトイレに行きたくなると夫を起こしてリビングの先のトイレまで連れて行ってもらう。申し訳ない気持ちから自力で頑張るのだが、リビングで何度となく転倒を繰り返し、利用するデイサービスから、体中に内出血があると報告を受ける。Aさんは、「周りに迷惑をかけることが申し訳ないから、自分なりに工夫しているつもりなのだけど、やはりいろいろなことが起きるの……」と申し訳なさそうな表情で話す。
「軽く認知症があり視覚障害でほとんど目が見えない母と耳のほとんど聞こえない父、この2人を介護するのはそろそろ厳しくて……」長女がポツリと言った。以前より長女はAさんの施設入所を希望していた。現実的に考えて、負担額の少ない特別養護老人ホームを希望するが、なかなか空きが出ず、入所に至らずにいた。家族も限界に近く、一旦はグループホームの入所となった。私たちの年齢で、マンションの家賃やローンを支払いつつ、同時に親の施設入所の支払いをするのはなかなか厳しいものがある。入所する親の年金受給額が潤沢であれば助かることもあるが、そうとばかりは限らない。私たち世代も、60代となれば、若い頃のようにがつがつと働く気持ちがあっても、実際は体が思うようにいかない部分もある。少し弱気な発言だが、そんな自分とも向き合いつつ、私も必死で働いている。この問題は、同じように私にも降りかかる。6090問題について、利用者家族を通じて日々考えている。

女優・介護士・看護師 北原佐和子氏
1964年3月19日埼玉生まれ。
1982年歌手としてデビュー。その後、映画・ドラマ・舞台を中心に活動。その傍ら、介護に興味を持ち、2005年にヘルパー2級資格を取得、福祉現場を12年余り経験。14年に介護福祉士、16年にはケアマネジャー取得。「いのちと心の朗読会」を小中学校や病院などで開催している。著書に「女優が実践した魔法の声掛け」「ケアマネ女優の実践ノート」










