認知症の診断 安心して受診できる環境とは/女優・介護士・看護師 北原佐和子氏

私は現在認知症専門クリニックで勤務している。認知症の診断を受ける受診者の気持ちにどんな寄り添いが必要なのだろうか。当事者でない私が寄り添うとは……。
初診で訪れる受診者は、ほとんどがご家族同伴。最近物忘れの多い親のことが気になり受診しました、とご家族が変化を感じて初めて受診に訪れることが多い。時には、ご本人が自ら感じる自分の中の変化、漢字が書けなくなった、本を読んでいても字が読めなくなった、さっきまで覚えていたことを忘れる、メモしたことまで忘れてしまう。家族や友人に「また忘れたの?」と指摘を受けるなどで訪れる。
ご家族と訪れる方はここに連れてこられて何故MRI検査や神経心理検査などを受けるのか分からず、MRI検査では狭い中に入り耳元で大きな音が鳴り響き、こんな検査をしたら病気になってしまう、と怒り出す方もいる。神経心理検査は、まずスタートは長谷川式認知症スケール(HDS‐R)、MMSE(ミニメンタルステート検査)を行う。このどちらの検査も「やっていられない。何の必要があってこんな検査をするのか」とやはり不満を仰る方もいる。正直な所、心理検査は、私ですら正確に答えることができるか不安に思う検査だと感じるので、文句を言いたくなるその気持ちは理解ができる。
これら検査の結果は10日から2週間後に出る。この結果を聞きに来るときの受診者は緊張の面持ちだ。時にはそれが血圧に反映される時もある。いつになく血圧が高いと言われる方が多い。そしてドクターは検査の結果をストレートに伝える。「相対的に見て、アルツハイマー型認知症です」と。その時のご様子は、「え……。」と言葉を失う方、「やっぱり……。」と言われる方。泣き出す方、淡々と話を聞き、アリセプトの服薬を勧められ、それをも淡々と受け入れる方、先生から認知症の説明を受けて「早くお薬を服用すれば安心なんでしょう」と前向きな方、実に様々だ。
その様々な思いをお持ちの受診者に対して、どのような対応をすれば良いのだろうか。今の私は、驚きを隠せずに涙する受診者、ご家族と共に涙してしまうことがある。安心して受診を継続できる環境とは、その思いに寄り添うとは、を考える日々である。

女優・介護士・看護師 北原佐和子氏
1964年3月19日埼玉生まれ。
1982年歌手としてデビュー。その後、映画・ドラマ・舞台を中心に活動。その傍ら、介護に興味を持ち、2005年にヘルパー2級資格を取得、福祉現場を12年余り経験。14年に介護福祉士、16年にはケアマネジャー取得。「いのちと心の朗読会」を小中学校や病院などで開催している。著書に「女優が実践した魔法の声掛け」










