2024年6月12日号  7面 掲載

警察署に保護された母 高齢の両親と家族のこれから/女優・介護士・看護師 北原佐和子氏

2024年6月15日


先日、警察署から、母を保護していると連絡がきた。私の住まいは都内、両親は埼玉県に住んでいる。今からすぐに向かっても、23時頃にはなる。正直、明日も早朝から仕事。実家近くの妹は食事中に少しお酒を口にしたというので、都内に住む弟と私が向かった。
 

警察署に入ると、母は入り口脇のソファにタオルケットをかけて座っていた。あの気の強い母がとても弱々しく見えた。「とうとうこの時が来たか……」と正直思った。これからどうなっていくのだろう、と。話を聞くと、お巡りさんに緊急に知らせなければいけないことがあり、それで夜だというのに交番へ向かったらしい。ところが巡回中で留守。3月の上旬でまだ寒い中、交番の外でお巡りさんを待っていたという。交番に向かう道中も、近所で母を見かけた人が警察署に通報してくれたらしく巡回中の警察官が交番の外に立つ母を保護してくれた。母の話の道理は理解できるのだが、なぜそのような時間に交番に?明日でもいいのではないか?
 

警察署から自宅に向かうと、父は心配で寝ないで待っていたらしい。母と一緒に家に入る弟と私を見て、何故お前達がこんな時間にいるのかと驚いていた。そりゃそうだ。母は父の携帯を持って出かけたので、私達は父と連絡が取れぬまま母を警察署に迎えに行き、いきなり実家に帰ったので何事かと思ったのだろう。
 

この時に初めて母の開かずの間を見た。10畳ほどの部屋全体に物があふれている。何だか分からないものだらけで、そこかしこに山のように積まれている。前々から、行動のおかしさは耳にはしていた。鍵屋を呼んで自室に2個も鍵を付けた。鍵は常に母が持っているため開かずの間になっており、部屋内の状態はつい最近まで私達も、もちろん父も知らなかった。
 

階段から転倒した時も、理由を聞くと「後ろから誰かが押した」と言う。「誰が?」と聞くと「お父さんが近所の女の人を家に入れているのよ」と不可解なことを口走る。父曰く「ありえない。誰を入れるんだよ。知り合いなんていないよ」と言う。このあたりの確執は何が本当のことなのか、私達子どもにも分からない。
 

さてこれからどうなるのか、家族となるとそう容易くはない。家族の介護を経験された人の気持ちを痛切に感じた。

 

 

 

女優・介護士・看護師 北原佐和子氏

1964年3月19日埼玉生まれ。
1982年歌手としてデビュー。その後、映画・ドラマ・舞台を中心に活動。その傍ら、介護に興味を持ち、2005年にヘルパー2級資格を取得、福祉現場を12年余り経験。14年に介護福祉士、16年にはケアマネジャー取得。「いのちと心の朗読会」を小中学校や病院などで開催している。著書に「女優が実践した魔法の声掛け」

 

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