2024年8月14日号  15面 掲載

【書評】親不幸介護/評:浅川澄一氏

2024年8月18日

川内潤・山中博之共著
日経BP
1,760円(税込)

 

 

 

親孝行は「呪い」になることも
 

愛知県西尾市の女性副市長が4カ月前、「母親の介護のために」と辞任した。息子2人の子育てを頼り、母とは「離れられない仲だから」とも話す。
 

働き盛りの幹部が親の介護を理由に離職するケースがまだ跡を絶たない。副市長には母親への特別な思いがあったようだ。だが、介護保険で謳いあげた「介護の社会化」とは相容れない。
 

はて、となる中、家族介護の本質を突く本書の書名に注目したい。親不孝と見られる関係性こそ正し介護、と言わんばかりだ。
 

構成に一工夫ある。発行元出版社の社員が5年に及ぶ自身の介護体験を赤裸々に語るのがベース。新潟市で独居生活の彼の母親が、在宅ケアから認知症になり、グループホームへ入所する。
 

息子は節目ごとに東京から故郷に来訪、ケアマネジャーなど介護スタッフを頼り、手続きなどに追われる。
 

息子の対応法を巡り、介護相談のプロ、川内潤さんが丁寧な解説とアドバイスを送る。息子と川内さんの対談形式である。
 

遠距離からの介入、ケアサービスの選択、親との気持ちの行き違いなど多くの課題に川内さんが次々回答を出していく。
 

例えば、介護事業所の良し悪しの見極め方。厚労省の検索サイト「介護サービス情報公表システム」で従業員の退職者数を調べよ、と適切に忠告する。また、介護は「『親』という役を降りた個人の幸せをどう守っていくかである」として「親孝行とは関係ない」とバッサリ断言。その通りだろう。
 

急に介護に直面した男性会社員には大いに参考になる。仕事での成果主義や効率性の価値観とは逆の発想が求められるとの指摘には膝を打つ。
 

本書には続編がある。昨年11月に発行された「わたしたちの親不孝介護」だ。介護経験者や予備軍、在宅医、企業の人事担当者など8人が本書の読後感や介護観を語る。やはり川内潤さんが対談相手だ。
 

中で目を引くのは、本書を「勝ち組会社員の成功例」と断じるキャリアウーマンの視線だ。匿名での登場だが言い分には頷ける。見事な対応ぶりの新潟の地域包括ケアセンターに対しても、普遍性に疑問を投げかける。
 

本書の事例より広範囲な介護の様相が分かる。併せて読むといいだろう。

評:ジャーナリスト 浅川澄一氏

 

この記事はいかがでしたか?
  • 大変参考になった
  • 参考になった
  • 普通
全ての記事が読める有料会員申込はこちら1ヵ月につき3件まで(一部を除く)閲覧可能な無料会員申込はこちら

関連記事



<スポンサー広告>