い内科クリニック(長野県上田市)井益雄院長

2014年8月15日

長野県上田市で医師、薬剤師、自治会、ケアマネジャーらによる「安心して老いを迎えられる街づくり」が進んでいる。地域住民を巻き込むことで”住民主体”を打ち出す。中心となっているのは医師の井益雄氏と上田薬剤師会の飯島康典会長。井医師に上田市新田地区の取り組みを聞いた。

 

「崖から転がり落ちる前に未然に防ぐのが我々の役目」

 

そう語るのは「い内科クリニック」(上田市)の井益雄院長。高齢者の場合、軽い疾患でADLが急激に低下し、自立した生活が送れなくなることが多い。「例えば膀胱炎は処置によってすぐ直る疾病だが、我慢していると悪化しこれまでの生活が一変してしまう」。

 

医療や介護の支援は問題が生じてから動き出すのが一般的。「これでは手遅れ。入院して益々重度化してしまう」。

 

上田市新田地区では3年前に、厚生労働省の「チーム医療実証事業」の補助金を受け、住民主体の街づくりをスタート。新田自治会の協力を得ながらアンケートやシンポジウムなどで地元住民に啓蒙活動を行った。アンケートでは20歳以上の住民の80%が回答。「老後の心配」の質問には、健康、認知症、経済的・身の回りのことの他、「最期はどこで」といった切実な回答も得た。

 

井氏らは健康に対しての不安は医療機関、生活に関する不安は福祉がサポートする仕組みを考案。2年間の活動を踏まえ今年、NPO法人新田の風(井益雄理事長)を設立するとともに、小規模多機能型居宅介護「新田の家」(定員18名)を誘致した。

 

「元気な時は寄合いサロンなどで仲間を作り、要介護となったら自宅でサポートする。住民が皆で支え合う仕組みだ」

 

新田の家は5月1日にオープン。上田市内で高齢者総合福祉施設「アザレアンさなだ」を運営する社会福祉法人恵仁福祉協会のサテライト施設として開設。7月時点で既に10名近い要介護者がサービスを利用している。

 

「介護力の低下で、在宅療養は益々困難になる。要介護状態になる前に如何に関わり合えるか。NPO法人としては”介護の社会化”を掲げ、住民を地域全体で支えられるようにしていきたい」。

 

NPO法人では今年度の活動方針で学校との交流促進を掲げる。高齢者が社会に受け入れられる基盤作りを幅広く進めていく。認知症対策や住民との触れ合い交渉にもさらに注力する。

 

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