技術革新がDXを後押し アカリエ髙橋氏×ビーブリッド竹下氏【ICT×医療×介護対談】

2021年2月4日

第3回 IT会社が考える介護の近未来

 

本コラムはアカリエヘルスケアカンパニー(横浜市)の髙橋健一社長による「ICT×医療×介護」をテーマとした特別対談コーナーとなる。第3回目は、介護・医療・福祉業界特化型のIT支援サービス「ほむさぽ」を展開するビーブリッド(東京都台東区)の竹下康平代表との対談。介護現場でのIT化の課題やこれからの介護・福祉業界におけるICT活用について語ってもらった。

 

 

 

アカリエヘルスケアカンパニー 髙槗健一社長

 

 

 

■支援サービス立ち上げの経緯

 

——髙槗 介護業界向けサービスを始めたきっかけについて教えてください。

竹下 介護業界でのIT業務に従事する前は、システムエンジニアやシステムコンサルタントなどの職に就いていました。そして、転職を機に介護事業者としてITに向き合った際、現場でのIT導入がまだまだ不十分で、使う側も困っている印象を受けました。そこで、介護現場でのIT活用方法について支援する会社を2010年に立ち上げました。

 

 

 

■IT化の一番の課題「教育」

 

髙槗 IT化といっても介護業界では様々なやり方があると考えています。例えば、記録システムをクラウド化してパソコン上で共有や編集できる体制を整えること、介護現場の負担を直接減らすように見守りサービスを導入すること、ビジネスチャットツールを導入して職員間のコミュニケーションの効率化を図ることなど、様々なアプリやツールの導入が考えられます。業界全体としてIT化が進まない中、現状のままではどのようなことが課題になってくると思いますか。

 

竹下 一番の課題は、IT教育や研修に十分な時間が取れない点だと考えます。 介護現場では法改正やオペレーション、サービス利用者一人ひとりの状態など、日々多くの課題と直面している状況だと思います。 結果的に、IT教育や施設のIT化は後回しになってしまっています。ある程度規模の大きな法人でないとIT化を進める上で必要な知識を身に付けたり、それを進めることが難しくなっています。

 

髙槗 特に教育では、マネジメント層へのIT教育が重要だと感じますね。私自身エンジニアではないため、元々アプリやツールについて多くの知識がありませんでした。当社のエンジニアが「こんな無料のチャットツールありますよ」「こんな業務管理ツールありますよ」などと教えてくれるので、「無料だったら試してみよう」と導入を決めて、使い方を勉強しながら段々と浸透しました。

 

 

 

■テクノロジーによる介護の未来

 

——髙槗 今後10年で、介護業界のIT化はどのように進んでいくでしょうか?

竹下 業務系のICTの進化も目覚ましいですが、注目の分野の一つが移動支援機器、パーソナルモビリティです。この進歩は業界に大きな影響をもたらすのではないでしょうか。スイスでは段差を登っていけるような車椅子の開発が既に進んでいて、今後は自動運転などの各種モビリティの発展が期待できます。実際にある程度整備が進み普及が進んだ近未来を想定すると、お年寄りが自宅や施設に閉じこもっている全体数は減るのではないでしょうか。そうなると介護職員やケアマネは、施設や在宅だけではなく街中どこでも必要とされるようになるでしょう。

 

髙槗 買い物難民が発生している現状の解決策にもなりそうですね。

 

竹下 そうした結果、これからは施設だけではなく、日常の中で介護スタッフが必要になってくる時代になり、介護が閉ざされた空間内だけで行われるのではなく、様々な場所で必要とされると思います。 また、テクノロジーの進歩で施設や事業所におけるサービスも変わっていくと考えています。モビリティがしっかりしてくれば、屋外に自発的に出かけやすくなったり、車椅子自体に移乗機能が価値として付くことも想定できます。

 

髙槗 介護予防の観点からもテクノロジーは効果を発揮できそうですね。

 

竹下 そうですね。例えば居室内のセンサーとAIの進化により「先週より、歩行速度が秒速0.1m落ちてますが、お気づきですか」などと教えてくれて、必要な活動やサービスをリコメンドしてくれるようになるかもしれません。

 

 

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