介護・福祉の振興団体(前編)【ICT×医療×介護対談】
本コラムはアカリエ(横浜市)の髙健一社長による「ICT×医療×介護」をテーマとした特別対談コーナー。 第13回目は介護ロボット・ICTの活用推進などを行う公益社団法人かながわ福祉サービス振興会の得永真人氏、伊東明日香氏との対談。前編では介護現場で必要としているICTなどについて語ってもらった。

伊東明日香氏

得永真人氏
実証実験で現場意見との乖離防ぐ
■介護ロボット・ICTの活用推進
――髙橋 介護ロボットを扱う法人からの引き合いは多いのでしょうか。
得永 当法人は介護ロボットのメーカーとの付き合いも長く、10年以上になります。メーカーからの相談で多かったのが、一言で言うと「ロボットが思いのほか現場で受け入れられない」ということでした。 話を聞くと「エビデンスもある。名のある先生も太鼓判を押してくれているのに売れないんです」という意見でした。介護現場で実証実験を推進し、現場が使いたい製品を作っていけるようにしていきたいと感じました。
■活動内容について
――髙橋 実際にどのような活動をしていますか。
得永 協議会には、介護ロボットやシステムを提供する団体が所属しています。実証実験を各介護事業所で行うような形で、社会福祉法人、医療法人などの団体で年度ごとにブラッシュアップし、行っています。 メーカーは一度製品化してしまうと、そこから製品の中身を大幅に変えることは難しいです。そのため、主要な部分を変えず、どのように運用していくかが肝になってきます。実際に現場で活用し、その肝の部分に対してアドバイスを頂いている状況です。
――髙橋 実証実験の中で、手ごたえを感じたものはありますか。
得永 介護向けにロボットスーツを作っているメーカーが思うような成果が出ておらず、そのスーツの値段が高いのが原因なのかと思っていましたが、実際に施設で働いていた中高年の女性に使ってもらうと、普段現場で使うのには適さない重さやサイズ感でした。 それまでの実験では男性で大柄な人の試用が多く、現場のユーザーイメージとかけ離れたものでした。そこから改良していく方向性が見えてきました。
――髙橋 介護業界は異業種からだと把握しにくいこともあるかと思います。メーカーもどこにアプローチしたら良いかわからないケースがありますか。
伊東 エビデンスを提供するために、メーカーと介護事業者をつなぐ業務に力を入れております。メーカーサイドで考えたことがどの施設と合っているのかや、見守りセンサーなどで既存の製品とどう差別化していくべきかということを考えています。 活用研究会の中では、介護事業所向けに機器のデモ会をやっていますが、「これは施設じゃないよね。在宅向けだよね」など、活発な意見が研究会の委員から出ています。
■IT化について
――髙橋 活用研究会に介護事業者が参加しているとのことですが、どのように活用できるのでしょうか。
得永 コストの面でインセンティブがあり、費用をかけずに一定の期間ICTシステムなどを試したりすることが可能です。例えば、「見守りに興味がある」という事業所の希望を受け、事務局でマッチングするフローになっています。
伊東 結果としてIT化を推進している介護事業所は若い人材の採用に結びつけていると思います。このような最先端の取り組みをしていることでの評価を採用の売りにしています。
――髙橋 実証実験では導入までに時間がかかったり、大変でしょうか。
伊東 まずはマッチングから始め、3者間の打合わせを行い、実証実験の期間、対象についてなどの覚書をとっていきます。活用研究会の介護事業所の参加者は理事長や施設長であるため、決裁権があり、即断で決められる場合が多いです。そこから現場の運用に落とし込んでいきます。
(後編に続く)

アカリエヘルスケアカンパニー 髙橋健一社長