新型コロナと医療計画見直し 新興感染症対策、早期記載を/武藤正樹氏

2021年1月18日

2020年11月19日の「医療計画の見直し等に関する検討会」(座長‥学習院大学経済学部遠藤久夫教授、以下「見直し検討会」)で、「新興感染症等の感染拡大時における医療」を、次期第8次医療計画(2024年~2029年)の6番目の事業として位置づけることが決まった。

 

これまで医療計画には5疾病5事業の重点疾病、重点事業が定められている。5疾病とは、がん、脳卒中、心血管疾患、糖尿病、精神疾患で、5事業とは救急医療、災害医療、へき地医療、周産期医療、小児医療である。新型コロナ感染症に代表される新興・再興感染症対策は明記されていない。まさに医療計画の盲点だったと言える。

 

 

さて、見直し検討会の役割は、都道府県が策定する医療計画に対する国としての基本指針を審議することだ。このため検討会の内容はその時々で突発する大災害や感染パンデミックなどに大きく影響を受ける。

 

現在進行中の7次医療計画の前、第6次医療計画は13年からスタートした。この第6次医療計画の基本指針を審議する医療計画見直し検討会は10年12月からスタートし、著者が座長を務めた。しかし翌年11年3月11日の東日本大震災の発災により、見直し検討会をはじめ厚生労働省の審議はすべてストップした。5月下旬からようやく再開された見直し検討会は、まず医療計画における「災害医療」の再検討からスタートしたことを覚えている。

 

 

今回の見直し検討会の最大テーマはなんといっても新型コロナ感染症である。これを医療計画の第6番目の事業に加えたことは正解だ。ただそのスタートが24年の第8次医療計画というのはいささか遅すぎはしないだろうか?新型コロナ感染症はこれからも続く。少なくとも2~3年は続くだろう。このため24年スタートの次期医療計画まで待つのは遅きに失している。

 

今年は18年から23年まで6年間続く第7次医療計画の中間見直しの年にあたる。確かに新興感染症対策を6事業目に加えるには医療法改正が必要だ。このため今期の医療計画の中で事業化することは時間的にも無理だろう。しかし法改正を伴わなくとも通知などで、来年度から5事業に並立した形で新興感染症対策を記載することはできないのか?

 

 

来年度から始まる第8期介護保険事業計画には、20年7月27日に開催された社会保障審議会介護保険部会でその基本指針に「災害や感染症対策に係る体制整備」がすでに記載されている。こうした介護保険事業計画と歩調を合わせ、第7次医療計画の後半3年の医療計画に感染症対策を何らかの形で記載したいものだ。

 

 

 

武藤正樹氏(むとう まさき) 社会福祉法人日本医療伝道会衣笠病院グループ相談役

1974年新潟大学医学部卒業、国立横浜病院にて外科医師として勤務。同病院在籍中86年~88年までニューヨーク州立大学家庭医療学科に留学。94年国立医療・病院管理研究所医療政策部長。95年国立長野病院副院長。2006年より国際医療福祉大学三田病院副院長・国際医療福祉大学大学院教授、国際医療福祉総合研究所長。政府委員等医療計画見直し等検討会座長(厚労省)、介護サービス質の評価のあり方に係わる検討委員会委員長(厚労省)、中医協調査専門組織・入院医療等の調査・評価分科会座長、規制改革推進会議医療介護WG専門委員(内閣府)

 

 

 

 

 

 

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