厚労省 第三次補正予算活用 介護職の獲得に着手

2021年3月11日

労働力過剰業種から労働力不足業種への人材移動は、従来から総務省や厚生労働省が掲げてきた雇用政策だ。大量の失業者が発生しているコロナ禍の状況は、図らずもこの政策を推進しやすい。厚労省は第三次補正予算を活用して介護職の獲得に着手した。

 

 

厚労省が1月29日に発表した「一般職業紹介状況」によると、2020年12月の有効求人倍率は1.06倍。前月と同じ倍率だったが、年間平均は1.18倍で、前年の1.60倍を0.42ポイント下回った。有効求人は前年に比べ21.0%減で、有効求職者は6.9%増となった。雇用情勢は悪化している。

 

 

一方、有効求人倍率が下がる中でも介護職では上昇している。20年12月の職種別有効求人倍率を見ると「介護サービス」は、前月の3.88倍から0.11ポイント上昇して3.99倍となり、全職種平均1.03倍を大きく上回った。この需給ギャップ解消に向けて、厚労省は未経験者の介護職への就業支援を目的に、20年度第三次補正予算に「介護職就職支援金貸付事業」の創設を盛り込んだ。

 

事業の内容は介護職員初任者研修や介護福祉士実務者研修などの修了者に「介護分野・障害福祉分野就職支援金」として20万円を貸し付けるというもの。貸付対象者が介護分野などに就職し、2年間、介護業務に継続して従事すれば返済が免除される。

 

 

 

ハローワークでもマッチングを強化

 

 

ハローワークにおいても未経験者と介護事業者とのマッチングを強化する。二次補正で全国544ヵ所に開設しているハローワークのうち、101ヵ所に設置されている「人材確保対策コーナー」を103ヵ所に増設した。さらに三次補正では8ヵ所を新たに設置し、21年度には1 11ヵ所になる。人材確保対策コーナーは、医療・福祉(介護・保育)、建設、警備、運輸など人手不足の顕著な分野に対する求職者の拡大を図るとともに、事業者の求人を支援してマッチング機会を拡充している。

 

支援内容は、求人者に対しては求職者ニーズの把握と求人充足に向けた助言・指導、未充足求人への個別フォローアップを行う。求職者に対しては、担当制による職業相談・職業紹介や、求人・業界動向の情報を提供している。さらに関係機関・業界団体と連携して面接会を実施し、介護については介護事業所へのツアー面接会を開いて、介護ロボット体験なども提供している。

 

 

ただ、こうした施策によって異業種から介護職への転職が促進され転職者が増えたとしても、その人材がどの程度、介護分野に定着するかは不透明だ。介護職への転職者数を調査した公的データはないものの、リーマン・ショック直後に「異業種から介護職への転職者が増えた」(介護業界関係者)という。一方で、異業種からの転職者には、雇用情勢が回復すると以前の職種に戻る傾向も見られるとされる。

 

 

人材確保のハードルはそれだけではない。介護職は感染リスクの高いエッセンシャル・ワーカーで、しかも在宅ワークの困難な現業部門の職種である。コロナ禍にあって採用の不利な職種だ。外国人技能実習生や特定技能「介護」人材の入国が滞っている現状も踏まえると、慢性的な労働力不足を解消する道筋は見えてこない。

 

 

 

 

 

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