介護業界の意見、一丸に/全国介護事業者政治連盟 久野義博会長

2021年4月14日

全国介護事業者政治連盟(東京都港区)は、一般社団法人全国介護事業者連盟(以下・介事連/同千代田区)と連携しながら、超高齢社会という国家的課題を乗り越えるため、政策提言や政治活動を行っている。各サービス・法人種別に細分化された介護業界で活動する約200万人の職員、事業者などと一丸になり様々な課題を解決につなげることが目的だ。政治連盟の活動、21年度介護報酬改定などについて、久野義博会長に話を聞いた。

 

全国介護事業者政治連盟 久野義博会長

 

――政治連盟の立ち上げについて。 久野 〝介護の産業化〞と〝生産性向上〞の2大テーマを実現させるために活動している。これらの政策提言のため、2019年9月に設立した。介護の産業化に向けて、介護事業者・職員のために土壌を構築したい。

 

――活動内容は。 久野 設立時は介事連・政治連盟の活動に対して、多くの政治家から賛同を得るための周知活動を行った。2年目となる昨年からは、政策課題としてコロナ禍の介護業界を守るため、職員・利用者に安心・安全を提供する活動を行っている。

 

――コロナ禍での活動について。 久野 新型コロナウイルス感染症が拡大した昨年3月、デイサービス、訪問介護などの在宅系の事業所で利用控えが始まり、稼働率が低下して資金繰りに行き詰まる事業者が多く出ることを予測した。昨年3月初旬の段階では、介護業界に対する政府系金融機関の融資制度はなかった。自民党に提言を行い介護業界に対しても、融資制度が必要であるとロビー活動を行った。3月23日、介護業界も政府系金融機関の融資制度(セーフティネット保証5号)の対象となった。

 

1800事業所に経営調査

 

――事業者に向けて経営実態調査を行った。 久野 昨年4月の緊急事態宣言が発令された際に介護業界が疲弊していることを政府に周知するため、「新型コロナウイルス感染症に係る経営状況への影響について緊急調査」を実施した。4月22日には、全国の約1800事業所の稼働率・利用率・売上減少率など、介護経営に関する影響を数値で示すことができた。補正予算を組む際のツールとして調査のデータを活用して欲しいと考えていた。結果、新型コロナウイルス感染症対策本部が「新型コロナウイルス感染症対策関係の第2次補正予算」として約4100億円の予算を取り付けることができた。

 

――施設でのクラスター対策について。 久野 昨年夏、北海道の施設でクラスターが発生した事例を挙げると、現地では保健所が感染拡大を危惧して施設間での職員の行き来を禁止したため、ほかの施設に職員が助けに行くことができなかった。クラスターが発生した施設で、自衛隊の医療チームを派遣できるように要望活動を行った。今では、連絡要員を各都道府県に設置して、コロナの影響で、必要と認められた場合に自衛隊の医療チームが出動できる状況になった。

 

“産業化”“生産性向上”のため政策提言

 

――政治家への提言は。 久野 自民党の友好団体として登録して選挙協力を行っている。団体を設立して間もない一昨年の参議院選挙から、自民党から依頼された全国を訪問した。昨年は東京都、静岡県の衆院補選、鹿児島県知事選のサポートなどを行った。昨年10月、田村憲久厚生労働大臣に「令和3年度介護報酬改定に向けた要望事項」を提出。昨年12月、菅義偉首相と麻生太郎財務大臣に、地域の介護と福祉を考える参議院議員の会において決議された「令和3年度介護報酬改定等に関する決議文」を提出。介事連の活動が評価されて、菅首相と対談をして介護の現状や要望を伝えることができた。

 

菅首相と対談を行った

 

――21年度介護報酬改定については。 久野 11月の財政制度等審議会財政制度分科会の方針では、コロナの影響は介護業界だけでなく、全産業が打撃を受けている状況のため、プラス改定をすべき事情は見出せないと判断された。19年度の介護業界全体の収支差率は2.4%で昨年度より0.7%減少しているが、調査期間は昨年の春までのもので、コロナによる影響は含まれていない。減少の大きな要因は採用コストだったため、稼働率の低下、かかりまし経費を含めると0.7%ではない。中小事業者の多くが破綻するという危機感があり、団体として報酬改定についてのロビー活動を展開した。介護報酬は0.70%引き上がることになり、厚生労働省は、細かいポイントでも業界の意図するポイントを加味してくれた。

 

例えば、グループホームの夜間職員体制の見直しでは、「1ユニット1人」の原則を維持し、安全性が確保できていると認められる場合、例外的に「3ユニット2人」体制を選択することが可能となった。「ADL維持等加算の単位数の引き上げ」では、安倍政権がADLを保つことで介護給付が抑制できると加算を創設した。取得している事業者が少なかったが、小規模事業者も取得できる体制になった。

 

――今後については。 久野 24年度の介護・医療の同時報酬改定に向けて、ロビー活動に力を入れていきたい。コロナが収束していれば、緊縮財政になることは必至だ。団体が大きくロビー活動を展開しなければ、24年度の報酬改定でプラス改定を勝ち取るのは厳しいと考えている。

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