【書評】ジェネリック医薬品の不都合な真実~世界的ムーブメントが引き起こした功罪~/評:武藤正樹氏

ジェネリック医薬品の不都合な真実
キャサリン・イーバン著
翔泳社
税込2,750円

小林化工・日医工などの不祥事により、ジェネリック医薬品の供給不足が続いている。 こうした中、昨年8月に発刊されたキャサリン・イーバン著「ジェネリック医薬品の不都合な真実」。
本書では米国の食品医薬品局(FDA)とインドのジェネリック企業ランバクシー社の闘いが描かれる。それはランバクシー社の元社員からの内部告発から始まる。5年にわたる企業側のデータ改ざんや事実隠蔽とFDAの査察官による摘発との攻防の幕開けだ。
さてジェネリック医薬品企業は以下のトライアングルの中でビジネスを行っている。「コスト」、「スピード」、「品質」だ。ジェネリック医薬品はまずコストを抑えなくてはならない。 そして先発品の特許が切れた瞬間に上市し市場を占有するスピードが求められる。この点、ランバクシー社は品質などお構いなしに、コストとスピードを追い求めた。
なんと米国のニュージャージー州から新薬を無申告でインドに運びこみ、その新薬を粉砕して自社のジェネリック医薬品の承認試験用のデータを捏造。さらに品質については承認基準の厳しい先進国向けと甘い途上国向けのダブルスタンダードで行っていた。
しかし元社員の内部告発後、FDAの腕利きの査察官ピーター・ベーカーがインドに送り込まれ、不正を暴く。本書ではその攻防がサスペンスドラマのように展開する。
流行の終焉、品質重視へ
読み終えて感じたのは、ランバクシー事件は今回の日本のジェネリック医薬品企業の不祥事と程度の差こそあれ共通していることだ。日本におけるジェネリック医薬品は特許切れ品市場の80%に達しブームの頂点を迎えた。こうした中の不祥事だ。 ジェネリック医薬品ブームはもはや終わりだ。今は立ち止まって品質を最優先にジェネリック企業を見直す時だ。
本書の最後で、FDAの伝説の査察官ベーカーが製薬企業に求めた言葉が心に突き刺さる。
それはただ一言「誠実さ」であった。
評:社会福祉法人日本医療伝道会衣笠病院グループ相談役 武藤正樹氏










