就労訓練、ぶどう園で 八天堂(広島県三原市)

2022年6月8日

製パン業などを手掛ける八天堂(広島県三原市)は2021年1月、社会福祉法人宗越福祉会(同竹原市)と共同で、竹原市のぶどう園での生活困窮者就労訓練事業を開始した。収穫したぶどうを同社が加工・販売することで確実に収益を上げ、持続性のある「商工」農福連携モデルの確立を図る。

 

作業に打ち込む人たち

 

 

 

スイーツ商品に加工し販売

 

就労訓練事業は2015年度に開始した生活困窮者自立支援制度に基づくもの。 ぶどう園を管理する八天堂が宗越福祉会に収穫までの業務を委託。収穫されたぶどうは八天堂が加工・販売し、収益は委託費で還元する。生活困窮者を宗越福祉会が雇用し、委託費から給与を支払う。現在、給与は月10万円前後。

 

 

訓練を受ける人は宗越福祉会に在籍する支援員のサポートのもと農作業を行う。現在、訓練を受けているのは持病を抱えていて、人との関わりに抵抗がある人や、経済的に困窮している高齢者など。地元のイベントへの参加や、簡単な清掃作業からスタートさせた。それぞれのペースで作業に参加しているという。

 

「最初は就労に不安を持っていた皆さんも、今では作業に真剣に打ち込んでいます。“作物が育つ”という形で成果が見えるのも意欲につながっています」(林義之常務取締役)

 

林義之常務取締役

 

 

 

人口2万4000人の竹原市の高齢化率は約42%で、生活困窮に関わる市への相談件数は年間90件ほど。同社は後継者不在で約1年間放置されていた市内のぶどう園を借り上げ、ここで就労支援事業を行うことを決めた。

 

「当社は以前より社会福祉法人と連携し障害者就労支援事業に関与しています。福祉分野でできることを常に考えていました」(林常務) 収益性を上げ、将来的には訓練を行ってきた人が一般就労に切り替えて働くことを目指すという。

 

 

農福連携モデルでの就労支援事業を持続可能なものとするため、同社は農作物の加工・販売の工程に力を注ぐ。 「ぶどうをスイーツ商品に加工し付加価値を高めて販売すれば、農作物自体の質に収益が左右されにくい。当社が就労支援事業に関わる意義はここにあると考えています」(林常務)

 

収穫したぶどうを使用した商品は、既に同社運営の「カフェリエ」などで提供されているほか、竹原市のふるさと納税の返礼品にも採用されている。5月初めには、広島市の商業施設の催事でぶどうを使用した「くりーむパン」を販売。ぶどう園での取り組みを知ってもらう機会とした。

 

「今後、多様な企業と提携しながら加工や販路の選択肢を広げていきたい」と林常務は語った。

 

 

ぶどうを使用した「くりーむパン」

 

 

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