4勤3休やリモートワーク デジタル強みに挑戦 / セントケアDX 谷口雅一社長
セントケア・ホールディング(東京都中央区)が昨年立ち上げたセントケアDX(同)。訪問介護と訪問看護を併設した事業所において、ICTを組み合わせたサービス提供を行うことや、4勤3休制やリモートワークなど柔軟な働き方を取り入れている点が特徴だ。谷口雅一社長に、詳しい事業モデルや今後の展望について話を聞いた。

谷口雅一社長
利用者宅にICT導入「退院時の安心感守る」
――立ち上げの経緯を聞かせてください
谷口 セントケア・グループでは、エリアを軸に多機能型拠点と訪問看護、介護から成る「コミュニティNo.1拠点」を展開していますが、その中でも当社は、サービスを軸とした新規事業として立ち上げました。
私は新卒で入社し11年目。セントケア西日本で訪問介護、小規模多機能などの所長や統括を経て、社長に就任しました。
――事業モデルについて
谷口 訪問介護と訪問看護を併設した拠点を開設しています。現在、東京都杉並区に2拠点を運営しており、既存施設から5キロメートル圏内でのドミナント展開を予定。5年間で売上規模20億円を目指します。
サービスにおけるDXとしては、スマートウォッチ、服薬支援ロボット、睡眠見守りセンサーなどを運用。まずはデータを蓄積し、利用者の身体状況や訪問時以外の状態の可視化、把握を目指しています。現状では、退院時や退院後に自宅へ導入し、1〜2週間程度使用しつつ運用しているところです。
念頭にあるのは、退院後自宅に戻ったときの安心感を守ること。その人にとっての「健康(平常)な状態」を見定め、医療が必要な人を在宅でケアするための環境整備という視点です。データにより傾向値を見ていくことで、異変があれば連絡し、必要に応じて緊急訪問することも可能です。主治医への報告やケアプランへの反映などのほか、データが蓄積されれば、急変前後の分析や予後予測にも活用できるでしょう。
――社員の業務のDX化や新しい働き方などについては
谷口 全社員にパソコン、スマートフォンを貸与し、ペーパーレスに取り組んでいます。デバイスの貸与により、自宅と利用者宅とを行き来するリモートワークも可能です。また、4勤3休制も導入。1日の勤務時間が長くなるため、これまで対応できなかった朝や夕方以降の訪問が可能になります。こうした時間・記録面での効率化により、従来よりも1件多く利用者のもとを訪問できるなど稼働を高められます。
なお、カフェなどでの勤務に活用できる出勤日数分のコーヒー代手当や在宅勤務に考慮した電気代手当、自身の自転車を活用した際の自転車手当など、ユニークな手当も多く用意しました。
さらに、社内コミュニケーションの活性化にはメタバースを活用。アバターで会議や研修などに参加でき、発言のしやすさからコミュニケーションや一体感が生まれます。研修の参加人数、意欲も向上しています。
――事務所にも工夫が
谷口 実は、事務所は2ヵ所ともわずか約35平米。事務所をコンパクトにする分、手当を設け、デバイスを貸与し、分散して仕事ができる環境を整備しています。抑えられるコストは抑え、一人ひとりの生産性と稼働、給与は高めていく。ケアの部分ではアナログの良さを追求し、エビデンスに紐づけた質の向上にデジタルを活用し挑戦したい。「アナログの魅力を最大限に引き出すためのデジタル化」に取り組んでいきます。
――採用について
谷口 当社は、基本的に正社員を採用しています。また、4勤3休制により年間休日は161日。「介護で働きたい人」が働きやすい運営を考えています。昨年7月に開始した採用活動においては、11月の事業所開設までに約80名、平均40代前半の人たちが応募してくれました。「DX 訪問介護」などと検索して北海道など遠方から応募してくれる人もおり、世間のニーズに対応できているのだと実感します。
チャレンジングな新規事業ではありますが、その分介護や看護に思いの強い人が来てくれています。日々の業務においても社員からの提案などが多く、そうしたカルチャーが息づいていると感じます。当社グループが40年かけて培ってきた経験をもとに、在宅ケア領域にイノベーションを起こしていきます。