有料老人ホームにシングルマザーシェアハウス併設 高齢者が子どもの見守り 一般社団法人HAHA
一般社団法人HAHA(東京都目黒区)は2020年1月より、住宅型有料老人ホーム「オーナーズテラス自由が丘」を運営してきた。同ホームには、子育て中のシングルマザーが住まうシェアハウスを併設。この事業は、「令和元年度・国土交通省・人生100年住まい環境整備モデル事業」に選定されている。オーナーズテラスのモデルを全国に広めたいとする伊藤敬子代表に聞いた。

伊藤敬子代表
アパート改装、2拠点目 不動産投資のモデルに
――現在の状況について
伊藤 オーナーズテラス自由が丘は、2棟の家が連なる形の住宅で、双方がウッドデッキでつながり自由に行き来できる造り。全9部屋で、そのうち3部屋がシングルマザー向けシェアハウスとなっている。子どもから高齢者まで、現在9名が居住している。
昨年6月には、近隣の不動産オーナーのアパートを改装し、新たに多世代型シェアハウスオーナーズテラスⅡ(全10室)をオープンした。スタッフ、シングルマザー世帯や高齢者など総勢9人が居住している。こちらのアパートも施設基準を満たせる見込みで、現在住宅型有料老人ホームの申請を行っているところだ。
――このモデルの特徴は
伊藤 高齢者の住まいにシェアハウスを併設することで、多世代が共生するモデルとなっている。また、最多でも10名という少人数の規模で、アットホームな雰囲気の中暮らせることも、高齢者が気兼ねなくコミュニティの中で過ごすにはちょうど良い。
オーナーズテラスは「家事付きの共同住宅」という点もポイント。75歳以上でも元気に動き回ることができる高齢者が増えている近年では、「ちょっと身の回りの手伝いをしてほしい」「おいしい食事を提供してほしい」「見守っていてほしい」など、「介護」までいかない「家事」「生活支援」のニーズが高い。HAHAではオーナーズテラスの運営を担うが、スタッフだけでなくシングルマザーも食事を準備し、高齢者の生活を見守る役割を果たしている。実質的に有老の人員配置基準より手厚いサポートができていると考えている。

オーナーズテラスで集まる入居者たち
――入居者には、要介護度が改善する人も
伊藤 高齢者と子どもはとても相性が良い。子どもたちの姿を見ると入居者の顔が輝き、食事の時間もぐんと明るくなる。子どもを見守るという役割を担いながら、多世代と適度な距離感でにぎやかに暮らすことが、高齢者の生活の活性化に寄与するのかもしれない。
――オーナーズテラスのモデルを全国に
伊藤 不動産オーナーにとって、このモデルは安定的な収益と、場所によっては8%と比較的高い利回りが期待できる。安定した入居率の理由の1つは「家事付き」住まいへの需要の高さにある。また、オーナーズテラスの家賃は約7万円~17万円の間で設定されているが、シングルマザーの家賃を低額に抑えたとしても、高齢者に月額4.7万円からの家事サービスなどを提供することで収益を調整できることも理由だ。
多世代が共生できる住まいのモデルは、世界的にもムーブメントになっている。日本にかつてあった長屋文化を再現したこのモデルを全国の不動産オーナーに広めたい。

2拠点目のアパートの共同リビング