【書評】看取りが近づいた時に/評:浅川澄一氏

2023年4月9日

看取りが近づいた時に
うめだまりこ氏

 

 

延命拒否を描く「医療マンガ大賞」

 

今回の書評の対象は紙の本ではない。ツイッターとホームページで読む。発行元は出版社ではなく横浜市医療局である。どういう仕組みか。

 

医療・介護現場で実際にあった印象的な出来事を横浜市が文章にして公開、その内容を描いたマンガ作品を募集する。同市は「医療マンガ大賞」と名付けて2019年から始めた。

 

 

4回目の今回、44作品の中から大賞に選ばれたのは、「看取りが近づいた時に」というテーマに応募したニューヨーク近郊に在住のうめだまりこさんの作品である。

 

登場するのは、2人暮らしの老父母と娘姉妹。施設に入居中の認知症の母親が誤嚥性肺炎で入院する。治療するが何度も再発を繰り返す。そこへ施設のケアマネジャーが呼びかけ、関係者で話し合いがもたれる。

 

 

ここまでは、施設でよく見られる場面だろう。この作品が良いのは、この後の展開だ。

 

登場したケアマネジャーが看取りへの備えについてきちんと丁寧に話し出す。死の宣告に姉妹は驚きながらも真剣に耳を傾ける。

 

喉が鳴る死前喘鳴から始まり、吸引や酸素マスク、点滴などの延命治療はいずれも必要ないと説明される。「苦しいという感覚は薄くなります」と理由も示され、娘たちは納得する。

 

最期の時を迎えた時、こうした説明が重要である。多くの場合は医師だが、ここではケアマネジャーがその役割を果たす。説明役が不在のまま、救急車での入院となり、苦痛を強いられる延命治療に至る現実がまだ多い。

 

 

横浜市が公表した筋立ては、実は、201810月に朝日新聞に掲載された記事に基づく。横浜市の特養「グリーンヒル泉・横浜」のケアマネジャーが体験したことだ。この記事を横浜市が患者家族からの視点に書き換えてマンガ化を募った。

 

 

今回の同賞のテーマは4つ。それぞれに家族や医師など異なる2つの視点から同じテーマを描くという複雑な構成。患者・家族と医療現場との関係を深堀りしようという実験的な試みだ。

 

マンガで描くことで会話が多くなり、伝えたいことが分かり易くなる。大賞受賞作は、嚥下の仕組みが図解され、父親の悩む表情などマンガならではの秀逸なコマが続く。看取り対応の傑作と言えるだろう。

 

評:ジャーナリスト 浅川澄一氏

 

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