厚労省、生産性向上に針路 業務改善のポイント解説 生産性向上フォーラムで
厚生労働省は2月から3月にかけ、「介護現場における生産性向上フォーラム(事務局:NTTデータ経営研究所)」を全国8ヵ所で開催している。
3月1日には都内会場とオンラインにて関東甲信越エリア向けに実施。有識者をはじめ、自治体の取り組み、介護事業者による事例発表を行った。厚労省は生産性向上に向けた推進施策を説明し、介護事業者へ取り組みを呼び掛けた。
基調講演では日本大学文理学部の内藤佳津雄教授が登壇。厚労省が2023年度より数年かけて全都道府県での設置を目指す「介護生産性向上総合相談センター(仮称)」について重点的に解説した。同センターは介護ロボットやICT機器導入のための研修会の開催、機器の貸し出しなどのほか、人材確保の課題もワンストップで支援するもの。厚労省が既に設置している「介護ロボットの開発・実証・普及のプラットフォームの相談窓口」を転換するなど体制を整備する予定。具体的な進め方は、自治体向けの説明書を作成中だと説明した。
事業者の好事例 課題の発掘が要
自治体を代表し、埼玉県が取り組みを発表。「スマート介護施設モデル事業」などを通して見えたこととして、「経営層・管理職・現場職員の3者でプロジェクトチームを形成することが必須」と強調。様々な役職から意見を収集することが合意形成をスムーズにすると説いた。
また、山梨県も「介護ロボット・ICT導入に関するモデル事業」などについて報告。見守りセンサーなどの活用においては「職員の歩数削減」「転倒事故30%削減」など、施設ごとに適切な目標を設定し、成果を定量的に検証することが重要と語った。
介護事業者による事例報告では、社会福祉法人杏樹会(埼玉県入間市)が講演。「介護ロボットありきの業務改善では定着に失敗する」と警鐘を鳴らした。導入前に職員が感じる課題を付箋に全て書き出し、根本的な課題を洗い出したことが成功の鍵となった事例を紹介した。
さらに、社会福祉法人奉優会(東京都世田谷区)も見守りセンサーの活用事例を解説。取得した睡眠・呼吸・心拍数のデータを分析し、職員の負担軽減だけでなく入居者の▽睡眠改善▽看取り期▽減薬の観点でケアの質の向上につなげている。また、業務効率化によって派遣職員が0人となり、求人費用が削減された効果も発表した。
「経営者のコミットメント」鍵
続けて、介護事業者の伴走支援サービスを行うTRAPE(大阪市)の鎌田大啓社長が登壇。生産性向上に向けたDXの成功事例の共通点は「経営者のコミットメント」にあると重点的に説いた。
経営者自身が、経営戦略的に生産性向上が重要であると認識した上で、自らの口でプロジェクトの目的と内容を全職員に説明し、協力を〝お願いする〞姿勢が必要と言及。「任命したプロジェクトリーダーが壁に当たった際は孤独にせず、伴走型で支援してください。その乗り越え方が成功・失敗の分かれ道です」と聴講者にメッセージを送った。
最後に、厚労省の老健局から秋山仁氏が講演。厚労省の施策方針として、昨年12月に新たに策定した「介護職員の働く環境改善に向けた政策パッケージ」(図)を紹介した。
3本の矢と8つの取り組みを示しており、特に①の、ワンストップ窓口の設置については都道府県を巻き込んだ働きかけを強化する考え。同パッケージに加え、来春4月から本格稼働する予定の「ケアプランデータ連携システム」の利用促進も重点化していく。
厚労省の「介護サービス事業における生産性向上に資するガイドライン」などのツールも上手く活用し、生産性向上の取り組みを促進するよう聴講者に呼び掛けた。

厚生労働省の資料をもとに作成