誰でも一定水準に達する仕組み ICT人材の育成(前半)【つなぐ支えるICT】

2023年4月22日

 

 

山梨県立大学人間福祉学部・福祉コミュニティ学科の伊藤健次准教授は、学生教育の傍ら、福祉専門職の卒後教育にも携わる。特に力を入れてきたのは年間70ケース以上実施する事例を用いたグループスーパービジョンと地域ケア会議における個別事例検討。また厚生労働省「科学的裏付けに基づく介護に係る検討会」構成員などの活動を通じ、テクノロジーの普及も推進してきた。

伊藤准教授に、介護業界におけるテクノロジーの活用や、そのための心構えについて話を聞いた。

 

 

山梨県立大学
人間福祉学部・福祉コミュニティ学科
伊藤健次准教授

 

 

 

髙橋 現在の仕事内容について教えて下さい。

伊藤 山梨県立大学の人間福祉学部というところで、介護福祉士と社会福祉士の養成教育を担当しています。私自身は介護福祉士課程の専任教員という立場ですが、基本的に介護の資格を取る学生は社会福祉士も取るということで、ダブルライセンスを取得する学生達へ福祉専門職の養成教育をしています。そのほか、大学外では実務者向けの研修、サポートも実施しています。

 

1番多いのはアセスメントの研修など。あとは地域ケア会議などでの事例検討のサポート、コーディネートなどが多いです。その中で、ICT化といったプロジェクトなどに呼んでいただいて、一緒にやらせていただくこともあります。

 

私自身4年生の大学で、社会福祉士と介護祉士の資格取得のベースとなる学習をして、卒業と同時に国家資格2つを取りました。そして特別養護老人ホームに勤務し、介護職と相談員を6年程やっておりました。大学で受けた教育のいいところと、不満なところを両方感じながら、現場で仕事をしていました。そういう中で、専門職の養成教育に少し興味が出てきたといった感じです。

 

 

 

髙橋 介護業界のIT・ICT化についてどのように考えていますか。

伊藤 私は介護の「職人」的なものに憧れがある人間ですが、必要な人材を生み出すということに関して、社会的要請には職人を育成しようとするととても間に合わない。資格だけではなくて、きちんとした専門職としての教育とトレーニングを積んだ人材は、必要数の1割も供給できない状況にあります。だからこそ、誰がやっても一定の結果が出せる仕組みも必要だと思います。

 

その1つがICT化であったり、ロボティクスであったりします。チェーン店の食事が全国どこでも一定以上の水準であるのと同じで、顧客が満足できる水準で平均化していることは素晴らしいわけです。それを超える超絶スキルを持っている人は、それはそれで付加価値になります。日々の繰り返しやらなくてはいけない業務については、高い水準での均一化、アウトプットになるような形でICTの活用が求められているのではないでしょうか。

 

 

髙橋 介護の面白さはどこにあるのでしょうか。

伊藤 現場の面白さは、自分の裁量で変えられる要素が結構あるところです。逆に言うと、例えば教わった通りやろうとしても上手くいかない時には、自分で試行錯誤して調整していく、上手くいく方法を探らないといけない。そうすると、例えばマニュアルがあったとしても、その通りにしても上手くいかない部分に対して工夫の余地がある。その工夫の結果が、割とすぐ見えるというか、ダイレクトに利用者の反応、家族の反応で、直にそれを受けとれるという面白さは常にあった気がします。

 

一方、行っている事例検討というのは、自分が当事者ではないこともあるのですが、安全な位置から、他人の人生を覗き見させてもらえる感覚です。現場の苦悩に直接関わっていないという立場ではあるのですが、少し角度を変えてみると、その人の言っていることは、本人の理屈ではすごく当然なことじゃん、と分かる。「だからこういうことが許せないのね」とか、「だからこういうことをしたがるのね」とか、そういうのが腑に落ちる瞬間がすごく面白いですよね。

 

 

 

ロボテ 髙橋健一社長

東京外国語大学卒業。米国留学後、ユニリーバなどで経験を積む。父親の病をきっかけに、高齢期における社会課題の解決を志す。ベネッセスタイルケアの企画経験を経て2014年にアカリエを設立。21年に、同社の「HRモンスター」事業など分社化、robottte(ロボテ)を設立した。

 

 

 

 

 

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