介護職が「福祉旅館」 宿泊前アセスメント 家族の安心に

2023年4月29日

日本初の福祉旅館として知られる「サポートイン南知多」(愛知県南知多町)。バリアフリーなどの設備面に加え、介護職員による介助などサービス面も充実させることで、高齢者や障害者、その家族も安心して宿泊できる旅館だ。介護・福祉事業の知見を活かし事業展開するマザーズリヴの大杉和洋旅館責任者に話を聞く。

 

 

――介護・福祉事業者がなぜ旅館を
大杉 母体のマザーズグループでは、20年前からグループホームをはじめとし、訪問看護や障害者グループホームなどを展開。「福祉のまちづくり」を目指し事業を行ってきた。

 

入居者と旅行に行く際、宿泊を断られてしまうケースや、行けたとしても周囲に気を遣い、入居者も職員も疲れて帰ってくるといった経験があった。介護職による福祉旅館をつくれば、ハンディキャップがある人も楽しい旅行ができると考え、2018年にオープンした。

 

 

――旅館の特徴は
大杉 全館バリアフリーで、車椅子の人も移動できるスロープや特殊な畳を使用。当社の理学療法士などと設計を考え、ユニバーサルデザインのトイレや手すりの高さにも配慮した。好評なのがリフト付きのジャグジー風呂。スタッフによる介助・リフト活用により安心して入浴できる。また、食事は旅館ならではの彩りを残したまま、とろみ食などの食形態に柔軟に対応する。

 

カラフルに光り、豪華なリフト付きジャグジーが人気

 

 

旅館スタッフは、介護福祉士や施設での勤務経験がある人材を揃え、介護の知見だけでなく旅館としての〝おもてなし〟の教育を施したスタッフを配置。食事や排泄などの介助も行う。さらに、必ず事前に移動や排泄の状況、身体情報などを電話でヒアリング。前もってアセスメントをとり、家族の懸念点を払拭することで、安心感を生み出している。

 

また、就労継続支援A型・B型として、障害者が働いている点も特徴。宿泊者・働く人にとっても優しい旅館を目指している。

 

 

――実際にどんな人が宿泊するか
大杉 個人客もいるが、施設の団体客が多い。特定の疾患を理由に宿泊を断ることはなく、リピーターも多数。「人生で最後の旅行だろう」という想いで宿泊する家族もおり、そのひとときをサポートできるのはスタッフにとっても大きなやりがいとなる。

 

和室・洋室で計8部屋あり、1泊2食付きで約1万7000円~。1対1の介助が必要な場合、30分2700円から対応している。

 

 

――コロナ禍を経て、最近の状況は
大杉 コロナ禍では1棟貸し切りプランも人気で、最近は宿泊数も増えつつある。昨年12月には、サービス産業生産性協議会の「第4回日本サービス大賞」にて「国土交通大臣賞」を受賞。認知度向上に弾みをつけた。

 

また、2022年には三重県津市の温浴施設「湯の瀬」の運営を受託。こちらでも16室の福祉旅館を併設している。地域交流など、福祉とツーリズムを掛け合わせた地域活性に挑戦中だ。

 

 

きざみ料理。サービスも食事も、おもてなしにこだわる

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