職員定着の好循環 10年以上勤務、8割 さつきケアサービス
介護付有料老人ホーム「さつきホーム」(埼玉県行田市)を運営するさつきケアサービス。
職員35名のうち8割が10年以上勤務と、定着率が高い。任せて褒める、意見を吸い上げる、県や経済産業省などの認定を取得するといった様々な角度から「評価・承認」の機会をつくり、職員の帰属意識・意欲を高めている。小規模事業所ならではの取り組みを高橋貴子社長に聞いた。

高橋貴子社長
埼玉県モデル事業所 「任せる・認める」育成
――高定着率の要因は
高橋 1事業所のみの運営のため、私の目が現場に行き届く点は大きい。加えて、「評価・承認」することを重要視しており、積極的に職員に「相談する、頼る、任せる」を行った上で、褒めることも評価・承認の1つ。特にリーダーには権限委譲を進め、会議や社内稟議を通じて判断を委ね、自主的に動く風土を醸成している。
各職員に帰属意識を持ってもらうため、意見を認め、施設づくりに反映することも意識。例えば今年1月には32床から50床への増床にチャレンジしており、その際に間取りやコンセントの位置、壁の色など職員の声を具現化していくことで「自分たちが作り上げている施設だ」という認識を持ってもらった。
新入職員に対しても研修やOJTで定着を図っている。
――給与・賞与に関する「評価」については
高橋 スキルを明確化して給与や賞与で職員間に差をつけるより、個々人のペースにあったレベルアップを認め、皆が毎年必ず少しでもベースアップできるようにしている。これはリーダーたちの意見で、当社の職員は高い給与よりも日々のやりがいを重視する傾向がある。この給与体系のほうが人間関係に溝を生まないという判断だ。
――だからこそ賃金以外での「評価・承認」が大事になってくる。県などの認定制度の活用も評価の1つか
高橋 経産省の「事業継続力強化計画」、埼玉県の「介護人材採用・育成事業者認証制度」など複数の認定を積極的に取得している。外部機関に評価してもらうことは、職員にとって仕事の誇りとなり、次のチャレンジへ弾みがつく。
増床や認定の取得など新しい挑戦は、日々の業務の中に刺激を生む。職員は人の悪口を言うより、皆で取り組みを達成することに思考が向き、結束力が高まると考える。
――埼玉県の「スマート介護施設モデル事業」にも挑戦した
高橋 生産性向上に向け、見守りセンサーを導入。プロジェクトリーダーを現場職員に任せ、機器が苦手な人も活用できるよう適宜プロジェクトメンバーを加えて取り組んだ。すると様々な職員から意見が出て、それを承認しつつ取り組めた。
新しい機器を導入すると一時期は効率が低下するが、それを乗り越えるために「小さな成功」を認め、共有することも重要。生産性向上に向けた現場づくりも、職員定着に寄与している。
職員が辞めないことが入居者や地域からの信頼につながり、施設は常時ほぼ満室。職員定着、経営の安定、新たな挑戦――の好循環を生んでいる。

現場職員にリーダーを任せ、テクノロジーの活用を推進