高齢者特化プリペイドカード 認知症の人も安心して買い物を KAERU
認知症の人や認知機能の低下に不安がある人をターゲットにした、日本初の買い物アシスタント機能付きプリペイドカードサービス「KAERU(かえる)」。位置情報と連動したメモ機能や家族によるチャージ機能などで、高齢者の買い物をサポートする。東京都主催の東京金融賞2022「金融イノベーション部門」1位を受賞するなど注目が集まる。KAERU(東京都中央区)の福田勝彦取締役COOに話を聞いた。

介護職による活用も構想中
――サービスの内容は
福田 プリペイドカードとアプリを紐づけたもの。カードは事前チャージ式で、MasterCard加盟店でクレジットカードと同じように使用でき、おつりの計算に悩むことがなくなる。決めた上限額に合わせて毎日自動でチャージされる仕組みのため、使いすぎる心配がない。
また、位置情報と連動したアプリのメモ機能により、行く店に近づいた際、メモが通知される。「何を買いに来たか忘れた」「メモをなくした」という悩みの解消につながる。
オプション機能で家族などを設定すると、その人が代わりにアプリ上でチャージや履歴確認、紛失時の一時利用停止、カード発行などを行うことが可能。家族が毎月現金を渡しに行く、渡したはずの現金がない、といった負担も解決できる。
紛失時はカードを再発行すれば元のカード残高を継続して利用可能。プリペイドカードのため与信審査はなく、暗証番号も不要だ。
――なぜサービス開発に至ったか
福田 我々立ち上げメンバーは、電子決済サービスに携わってきた経歴を持つ。高齢者にこそキャッシュレスの利便性が広がるべきと考え、KAERUを構想。2022年5月にリリースした。
第三者割当増資と金融機関からの融資にて総額1・9億円を資金調達。現在、利用料は無料で、当社の売上は店からの決済手数料。今後は一部サービスの有料化を考えている。
現在、経済産業省や京都府、福岡市など複数の自治体の協力を得実証実験を行う、社会福祉協議会の日常生活自立支援事業に活かしてもらうなど、活用実績を積み上げているところだ。
――――介護事業所での活用の可能性は
福田 訪問介護では買い物の際に利用者と現金のやり取りをする、老人ホームなどではおむつなどの費用は家族から預かった現金を使うといった場面でのニーズを想定している。トラブルや記帳負担の解消に向け、第三者の介護職員でもカードを使える仕組みを模索中だ。