特定技能の新制度創設/斉藤正行氏

2023年5月10日

 

 

転籍の可否、受入先に影響大

 

2023年4月10日に「第5回技能実習制度及び特定技能制度の在り方に関する有識者会議」が開催されました。会議では、今春に中間報告書、今秋に最終報告書を取りまとめて政府に意見提言する予定が示されており、中間報告書のたたき台が示されました。

 

大きな方向性は「技能実習制度を廃止し、人材確保と人材育成を目的とする新たな制度創設を検討すべきである」と示されました。技能実習制度は、開発途上国に対する技能移転を目的に、人材育成を通じた国際貢献制度であるはずが、実態は人手不足の業界の労働力として活用されるケースが散見され、一部悪質な管理団体や実習先による外国人実習生に対する人権問題などが指摘されていました。

 

 

当初、有識者会議は、労働力を目的とした制度は特定技能制度に集約し、技能実習制度は本来の目的に限定する方向性でしたが、中間報告書のたたき台では、技能実習制度の実態に即して、新制度創設の提言が取りまとめられました。

 

有識者会議での議論を重ね、秋の最終報告書にまとめることとなりますが、中間報告書のたたき台においても、既にいくつかの論点に対する検討の基本的な考えが示されています。例えば、技能実習制度と特定技能制度で受入れ可能な職種が一致していないことから、受入れ職種は特定技能に合わせた制度とすること。監理団体等は存続要件を厳格化し、悪質な監理団体等を排除する対策を講じること。

 

そして、受入れ先に大きな影響が生じることとなるのは、転籍の在り方です。これまで技能実習制度の最大の特徴は、原則転籍ができないというルールです。受入れ先は一定期間の雇用が確保でき、自由な転職活動が可能な特定技能制度に相対する利点と考えられていました。今回のたたき台では、人材確保の目的を加えて労働者となれば、転籍についても認めるべきであると提言されています。ただし、人材育成の目的も同時に有することから、自由な転籍を認めるのではなく、明らかな問題のある受入れ先の場合に転籍可能とするなど制限が設けられます。

 

 

ほかにも論点はありますが、新制度が創設されることとなれば、特定技能制度とのすみ分けを明確にする必要があります。

 

また、新制度は来年以降に国会などでの議論を経て創設されるので、制度創設は早くとも来年夏以降になることが予測されます。同時に、新制度創設の時期に合わせて、日本語要件や訪問サービスへの解禁など、介護特有要件の見直しも行われる予定であり、介護事業者はこれからの議論のゆくえに注目が必要です。

 

 

 

 

斉藤正行氏 プロフィール
2000年3月、立命館大学卒業後、株式会社ベンチャーリンク入社。メディカル・ケア・サービス㈱の全国展開開始とあわせて2003年5月に同社入社。現在の運営管理体制、営業スキームを構築し、ビジネスモデルを確立。2005年8月、取締役運営事業本部長に就任。2010年7月㈱日本介護福祉グループ副社長に就任。2018年4月㈱ピースフリーケアグループ代表に就任。2018年6月、介護業界における横断的・全国的組織となる一般社団法人全国介護事業者連盟を結成。㈱日本介護ベンチャーコンサルティンググループの代表を務めている。

 

 

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