点字の名刺/公益財団法人共用品推進機構 星川安之氏
私が点字の名刺を自分で作ったきっかけは、盲導犬ユーザーの知人に「点字を打ってなくて…」と言い訳しながら、名刺を渡した時「えっ!点字ないんですか?」と言われたことだった。笑いながらの会話だったが痛いところを突かれた。
凹凸のない字を、点字に対して墨字(すみじ)というが、墨字の名刺を受け取った彼女は、誰かに読んでもらい自分で点字を打たなければならない。さっそくネットで検索すると、100枚1000〜1500円で、既存の名刺に点字を付ける会社が複数見つかった。
「話のきっかけになる」、「相手にインパクトを与える」と勧めている。なるほどと思う反面、ここで作られた点字名刺の大多数は、目が見える人同士でのやり取りを想定しているのだなと思ううち、自分で作れないかと思い、点字の仕組みをサイトで調べてみた。
「点字は横2列、縦3行、小さな凸点6つの組み合わせで表示する文字であり、日本語の点字は、母音と子音の組み合わせで、ローマ字のようにシステマチックにできている」とあった。そして、点字の名刺を作るために点字器という道具が販売されていると分かり、さっそく購入した。
点字器に名刺を裏向きに挟み、点字一覧表を見ながら、読むのとは逆に右から左に、点筆という道具で1点1点打っていく。打つたびに、コツンという音と共に、手ごたえがしっかりある。点字には、ひらがなとカタカナの区別はなく、数字やアルファベットを打つときは、その前に数字やアルファベットを現す数符や外国字符を付ける。
また、苗字と名前の間などは1マス空けるなどのルールがある。それらさえ覚えれば、自分の名刺を点字付きの名刺に変えることができる。
この名刺、彼女に渡す日が楽しみである。
星川 安之氏(ほしかわ やすゆき)
公益財団法人共用品推進機構 専務理事
年齢の高低、障害の有無に関わらず、より多くの人が使える製品・サービスを、「共用品・共用サービス」と名付け、その普及活動を、玩具からはじめ、多くの業界並びに海外にも普及活動を行っている。著書に「共用品という思想」岩波書店 後藤芳一・星川安之共著他多数